【2】



 民が全て逃げていたと思っていた姫は、藻のそばに幼い少女がいるのを見つけた。




「何をしているの? 早く逃げなさい!」

「か、髪が…………藻に絡まってしまったのです」





 よく見ると、下の方の短い藻に少女の髪が絡まってしまっている。




「じっとしているのよ。綺麗な髪が切れないようにね」

「はい」




 彼女の細い髪が千切れたりしないように繊細な指を伸ばして、丁寧に解いていく。





「はい、取れましたよ。さあ、早く逃げて! 時間がありませんから」

「は、はい!! 姫さま、ありがとうございました」





 少女はできる限り速度を上げて底へ潜っていく。

 きっと、親の元へと行くのだろう。




 少女との会話は、爪で行われていた。




 実は、人魚の瞳が光るという伝説は間違いで、本当は爪が光り輝くのだ。

 人のように呼吸器はあるが、人魚たちは爪で会話する。




 人間達は、ただ光加減で金色に見える目を高く売る為に海を荒らしにやって来るのだ。




(愚かなる人間達よ…………伝説など所詮は噂程度でしかないものよ)




 船が近づいて来るのを見据え、呟く。

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