第12話 激しい攻防
試合開始の合図とともに構える両者。
ルスランは槍斧(そうふ)と呼ばれる槍と斧が一体化した長柄武器を扱う達人で、
武闘派のスターズと比べて非常に攻撃範囲が広いため、リーチという点では有利である・・が、中に入られると逆に小回りが利きづらいため、近接の間合いには持ち込みたくないだろう。
一方、スターズは遠間からルスランを攻撃するには『地走拳』などの遠距離攻撃、
もしくはルスランの攻撃を避け、その隙に懐へ飛び込んで攻撃する。
それぐらいしか方法はないため、攻撃範囲で勝るルスラン相手にどう戦うかが見所である。
ルスランはハルバートと呼ばれる槍斧を扱うが、さすがに武術大会のため、先端に付いた斧や槍は本物の刃物ではなく、安全を考慮したシリコン樹脂に特殊な薬品を混合して作った大会用のハルバートを使う。
・・・しかし、大会用とはいえ、まともに直撃しても致命傷にはならないというだけで、油断してまともに打たれれば骨折や失神などはあり得る上に、大会用の武器さえ使えば、それらを使った術技はルール内であれば何を使っても良いため、
スターズは決して油断できないと言えるだろう。
ルスランは軽く槍斧をスターズに向かって突き、間合いを図り、
スターズもオーソドックスな構えから左手で軽くジャブを打ったり、左手を相手に突き出すようにして静かに相手との間合いを保つ。
実況席で両者の闘いを見守りながら今までを振り返るムツキとマイケル。
「スターズ選手は4年前からリュード選手やゼノス選手と共に世界大会に出てきた選手ですが、本当に当時から動体視力が良くてほとんど相手の攻撃をもらわないんですよねー」
「そうですね、かつてルスランと同じ槍斧の使い手と対戦した時も、相手の技で空中に投げられて、手足が宙に浮いている状態でも相手の空中殺法をすべてガードして着地したこともありましたからね」
恐るべきスターズの身体能力。
スターズは、左腕でルスランの槍斧を払い、
「草刈り(くさかり)」
素早いローキックをルスランの左足の太ももにヒットさせ、すぐに元の距離に戻ってくる。
「瞬連槍(しゅんれんそう)!」
今度はルスランが槍斧による素早い突きの3連撃をスターズに向かって放つ。
スターズは一太刀目をスッとサイドに移動して避け、2発目、3発目は左右の腕で裁いてしまう。
スターズは相手の攻撃を裁いた時が好機だと思っており、すかさずルスランの懐に入ってきた!
「昇り竜(のぼりりゅう)!!」
だがしかし、それはルスランも重々承知の上。そうなった時の対策も考えており、
スターズが入って来たところに合わせるように飛び膝蹴りをカウンターで放った!
当たる!!
誰もがそう思った!
・・・しかし、そこにスターズの姿は無かった。
「・・・」
スターズは落ち着いてルスランの飛び膝蹴りをサイドステップで避けていたのだ。
実況席にいるムツキも思わず冷や汗をかいており、驚いた様子で実況している。
「今のルスランの飛び膝蹴りを出すタイミングは絶妙でしたね!スターズ選手危ないと思ったんですが、よく避けましたよ。あれ並の選手だったら当たっていてあの一撃で試合終了もあり得ましたよ」
更にスターズとルスランの攻防は続く!
再びスターズは左腕でルスランの槍斧を打ち払い、中へ入ろうとしてきた・・
ルスランの飛び膝が来る!誰もがそう思った。
「肝突殺(かんとつさつ)」
しかし、そうはさせまいとスターズは前蹴りでルスランのボディを蹴りつけて突き放しては、すぐさま間合いを詰め、
「肝突昇り竜(かんとつのぼりりゅう)!」
今度はスターズがジャンプをしない膝蹴りをルスランのボディに叩き込んだ!
さすがに今のスターズのボディ2連続攻撃は効いたか!?。
・・・しかし、
「爆灰鍾(ばっかいしょう)!!」
まだそれほどのダメージを負っている様子はなく、
ルスランは槍斧を真上に振り上げ渾身の一撃を振り下ろす!
ドーーーン!!
すぐさまスターズはバックステップでその場から離れるが、ルスランの振り下ろした渾身の一撃は檀上の床のコンクリートを割り、破片が周囲一帯に飛び散った!
いくら大会用の槍斧とはいえ、今の一撃を受ければスターズといえども終わりだろう・・
完璧に避けたスターズだが、飛び散った破片はスターズの腕をかすめ、さすがのスターズもかすり傷を負ったようだ。
「はあァァァーーー・・・!」
ルスランの反撃が始まる。槍斧を壇上の床に立て、気合いの掛け声とともに、ルスランの周囲がおびただしい『エアル』に包まれる。
※エアルとは彼らの世界で「魔法」と呼ばれる特殊能力を使うための空中に浮遊している目に見えないエネルギー源である。
そして・・・
「旋風陣(せんぷうじん)!!」
ルスランの周囲に包まれたエアルは真空の刃を纏った竜巻へと変化し、ルスランの周りを取り囲んだ!
旋風陣はその間合いに入ろうとしたあらゆるものを切り刻む!
これではさすがのスターズも近づけない!
・・・そして
「旋風爆走撃(せんぷうばくそうげき)!!」
ルスランは周囲一帯の竜巻と共に、スターズに向かって突進してきた!
どうするスターズ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます