恋愛厨の首チョーカー
ちびまるフォイ
男の恋愛は2種類ある
家でDVDを見ているとスーツの男たちに取り押さえられた。
「ちょっ……なんですか!? 誰ですかあんたたち!」
「いいから動くな! ずれると頸動脈が切れるぞ!」
作業が終わると俺にはチョーカーがつけられた。
首輪と言い換えてもいい。
「申し遅れました。私、国から派遣されている恋愛推進委員会。
あなたのようなクソ童て……ゴホン。恋愛弱者を救うべく参りました」
「おいコラ。今なんて言いかけた?」
「あなたのようなタイプは総じて恋愛に鈍感です。
自分には恋愛なんてできないと思い込んで、恋愛の火種を見逃しています」
「そんなことは……ないと思いますよ」
「その首のチョーカーは恋愛に発展しそうな糸口があると反応します。
鈍感なあなたでもそれなら気づくでしょう?」
「はぁ……」
恋愛推進委員会はさっさと次の場所へ向かった。
チョーカーには通信機器も内蔵しているのでいつでもどこでも連絡可能とのこと。
最初こそ違和感あったものの慣れてしまえば気にならなくなり
チョーカーをつけたままコンビニにやってきた。
「560円になります」
女店員が会計を済ませたとき、チョーカーが音を出した。
『恋愛警報! 恋愛警報! 恋の予感です!!』
「いやちょっと待て! おかしいだろ! 初めて見る店員さんだぞ!?」
『お釣りを落としてうっかり手が触れあったりして
二人はレジを挟んでのういういしい恋愛が始まる予感です!!』
「あのお会計……」
「すみません!! すぐ払います!!」
慌てて会計を済ませてコンビニを出た。
全然タイプじゃない、とあの場で言うと相手に失礼過ぎる。
すぐにチョーカーを通して恋愛推進委員会に連絡した。
「ちょっと! このチョーカーどうなってるんですか!」
『ちゃんと恋愛の芽に反応したでしょう?』
「してないですよ!! あんな簡単に恋愛に発展するわけないでしょ!
あんたらどれだけ恋愛脳なんだよ!」
『まぁ何を言ってもあなたが本気の恋愛するまでチョーカー外れないんで。じゃ』
一方的に通信が切られてしまった。
この国で恋愛をしないことはこんなにも罪づくりなのか。
コンビニ店員が異性だというだけで恋愛に発展していたら
コンビニはただのナンパスポットでしかなくなるだろうに。
「やれやれ……めんどくさいことになったなぁ」
家に戻って、出し忘れていたゴミを持って集積場へ持っていく。
ちょうど近所のおばさんがゴミ出しをしていた。
「こんにちはーー」
「あ、どうも」
『恋愛警報! 恋愛警報! 恋の予感です!!』
「いやいやいや!! 近所に住んでるってだけじゃないか!!」
『帰りの遅い夫に疎外感を感じている奥様との
アブナイ歳の差恋愛がはじまる予感です!!』
「んなわけあるかぃ!!!」
目を点にしているおばさんから振り切るようにして戻った。
久しぶりに走ったものだから息がぜぇぜぇとあがる。
「ふざけやがって……なんでもかんでも恋愛に結びつけやがる……。
いったいどういう頭してやがんだ……」
「お兄ちゃん、どうしたの? そんなに疲れて」
妹がちょうどやってきた。
『恋愛警報! 恋愛警報! 恋の予感です!!』
「またかよ!! 見境なさすぎる!!」
『血のつながっている兄妹と意識し合わなかった仲だったのに
しだいにお互いの気持ちに気付き合う報われない恋の予感です!!』
「恋愛映画の見すぎだよ!!」
「お兄ちゃん……マジ? あたしのことそう思ってるの……?」
「ちがうちがう!! だから、ゴキブリを見るような視線を送るな!!」
これはもう限界だ。
異性とあらば見境なく警報鳴るとこっちが困る。
恋愛推進委員会の本部へと直談判しにいった。
「ちょっと!! いったいこれはどういうことですか!!」
「ははは。恋愛チョーカー気に入ってくれたかな?」
「不愉快すぎますよ! コンビニ入ればすぐ恋愛!
近所の人と遭遇すればすぐ恋愛! 果ては妹にあってもすぐ恋愛!!
あんたらの脳内どうなっているんですか!!」
「おかしいな。うちとしては君の恋愛傾向を分析した結果なのだが……」
「こんなすぐに恋愛に発展するか!! どう分析したんだよ!!」
恋愛推進委員会は首をかしがせた。
「変だねぇ。君の部屋にあるエッチなDVDなら
あのシチュエーションですぐに事がはじまったのに。
いったい恋愛とでなにがちがうんだい?」
恋愛厨の首チョーカー ちびまるフォイ @firestorage
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