死神ちゃんは定時に帰りたい

楠木黒猫きな粉

第1話 死神ちゃんはホウレンソウを怠らない

都内某所にある死神カンパニーの魂狩り係……その部署にはある特殊な人間が集まっていた。


「だぁかぁらぁ!!なんで連絡も入れずに狩りに行っちゃうかなぁ!!」

今日も今日とて魂狩り係には怒声が響いている。何故なら毎日の様に勝手に魂狩りを行う馬鹿がいるからだ。クビにしたい。

「部長~そんなに怒ってたら身長伸びなくなりますよ?」

「うるさい!そんなことは……どうでもよくないけど!今は良いの!!」

「気にはしてるんだ……」

「というか君はなんで毎日の様に依頼も出てない魂を狩って来るの?労働好きなの?ワーカーホリックなの?なら、私の仕事もやって来てよぉ!!ドラゴン相手とかいやだぁぁあぁ!」

(((あぁ……また上から無茶ぶりされたんだ……)))

「いや、あの……俺……ついやっちゃう性格でして……」

「性格でどうにかなるなら私だって上司の魂狩りたいよ!!けどできない!どうして?簡単だよ!生活かかってるんだよぉぉぁ!!」

そう、私が部長をやっているこの魂狩り係。通称 ロリ部長が仕切る問題児の巣窟。誰ですかこれを考えたのは。直々に狩りとってあげましょう。まぁ……私が13歳っていうのもあるんでしょうが……でもこの呼び方は気に入りません!

「部長!!落ち着いて!そろそろお仕事でしょ!!」

「ふぇ?…………にゃぁぁぁぁ!!!」

時計を見ると約束の時間を後数分で迎えると言ったところでした。大変不味いです!!うーむ上司の部屋まで二分はかかるから、不味いですね。これ

「とりあえず、支度支度!!それから武器!後は報告!」

急いで仕事服を纏って、ロッカーから仕事道具を取り出す。その急ぐ様を他の職員たちは笑顔で見守っている。まぁ、端から見たら学校に急ぐ子供にしか見えないですしね……

「準備完了!!いってきまーーす!」

上司の部屋まで……ってそんなに時間ないじゃないですか!!

「はぁ……はぁ……後、一分……しかないじゃないですか!もうやだぁぁ!」

そう言いながら走ってますよ?ちゃんと。 「あ…………と4階!!」

エレベーターは使わず階段を全力で登って行きます。

「後、ちょっと!!」

ドア見えた!!突撃ぃぃぃ!!

「こんにちわーー!!」

「時間通りだ。さぁ……今日の仕事の話をしようじゃないか」

「う…………はい」

嫌だよぉ~嫌だよぉ~今日だって絶対に無茶ぶりなんでしょお? 

「今日のターゲットは君が昨日倒し損ねたダークドラゴン50体と近隣住民から夜間にうるせぇと不満が来ているギャングのアジトの襲撃だ。頑張ってくれ、西原君」 

「分かりましたよ……やって来ますよ」

ウチの会社はブラック過ぎます!なんでいつも私だけ殲滅と襲撃なんですか!!私まだ13歳ですよ!!人の心がないんですか!!

「何をしている。早くいきたまえ。さもないとまた給料を下げるぞ」

「西原御影……今日も出撃いたします!」 

給料を人質に取られたら何もできないよぉ!上司の鬼畜!鬼!外道!!

私は今日もビルの40階の窓から飛び出しました。窓ガラスを破る些細ないやがらせです。

「あー着地どうしましょ……アスファルト傷つける訳にもいきませんし……」

あ、私には便利な仕事道具があったんでした!

「開いてください!」

仕事道具の大鎌を取り出して、後は魔力を放出して衝撃を殺すだけ。簡単ですね!

「…………ったーい!!」

痛い!すごくいたい!馬鹿みたいに痛い!全然衝撃殺せて無かった!!誰ですか簡単だよなんていったやつ!!タイミング難しいですよ!

「……行きますか」


ーー何処かの山


「たしか……ここら辺でしたよね」

うーん、やっぱり昨日のうちに殲滅しておくんでした。失敗しましたね。

「お、いましたいました!」

ひーふーみー……うん、50体居ます!ちょうど良いですね!固まって食事中ですし、一気に片付けましょうかね!

「開いてください!」

その一言を聞いたトランクから絶対に入らないような大きさの鎌が出てきました。そうです!これが私たちの仕事道具をしまう物!俗に言う魔道具です!

「さて、と。固まってるなら……開いてください!」

同じ言葉を次は鎌に言うと、刀身が伸びます。例えるなら……某神喰らいゲームに出てくる鎌の特殊形態の一つみたいな状態です。

「よーし…………いっきますよーー!!」

私がドラゴンたちを眺めていた場所から魔力放出で文字通り飛び出しました。

「『全ての方向を警戒しなきゃ駄目だよ?インベリアルヴァイト』」

集まってたドラゴンに刀身が伸びた鎌を降り下ろしました。すると私の左右から私の持っている鎌の刀身と同じような刃が2本ずつ出てきました。

「はい……どぉぉぉぉん!!」

あ、また一匹とりのがしたぁ!!もう、昨日だってとりのがしたのにぃ!!

「まちなさーーい!」

って言って待つわけないですよね……なら!!

「必殺!魔力弾!」

鎌の先に魔力を貯めて!放つだけです!

「よし!50体達成!って……なんですかこの音?」

あれ?山って動きましたっけ?動きませんよね?

「ということは……またですか……」

私は仕事服に付いていたフードを深めに被ってある意味死神の天敵に背を向けて走り出します!勝てないもの!

えーとスマホはどこだっけ?あったあった!

「もしもし!御影です!始祖竜に出くわしました!逃げます!」

『了解した。無事を祈っている』

よし!上司からの離脱許可も貰えましたし!

「よし!戦略的撤退!!このまま次の任務に移ります!」

そして、私はその山から逃げ出しました。


ーーとあるギャングのアジト


「…………屋敷?」

私が隣の家の屋根から見たアジトは普通の西洋風の屋敷でした。

「これって襲撃するまでもないですよ……」

私はまた大鎌の刀身を伸ばして降り下ろします。

「『屋内では周りに気を配ろうね?アラートインベリアルヴァイト』」

よし、全員分の魂改修完了!

「今日こそは定時に帰ってやりますよ!」


そう意気こんで帰った私を待っていたのは、ウチの部署の馬鹿がやった無断魂狩りに付いての始末書だった。

「部長…………お疲れさまです」

「うん、お疲れ~」

「大丈夫……ですか?」

「…………」

そう部下に聞かれた私は思いっきり本音を叫んであげました

「明日こそは定時に帰ってやるぅぅぅぅぅ!!」

そうして、時計は24時を指した時私の不気味な囁きが響いていました。

「明日には……アイツ絶対にクビにしてやりますよ……フフフ」

無人だからすごく響くんですよね……くすん

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死神ちゃんは定時に帰りたい 楠木黒猫きな粉 @sepuroeleven

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