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「花菱くん、斉藤君、こんばんは」
「・・・いらっしゃいませ」
斉藤君の愛想のいい「いらっしゃいませ」に続いたのは俺のそんな声だった。
「来ちゃった」
来ちゃった、ってなんだよ。いつも呼んでないのに来るだろ。いや、お得意様なんだから来て欲しいけれども。
「お久しぶりです、常盤さん」
「やぁ、斉藤君。会いたかったよ」
さらり、まるで呼吸するかのようにそんなサムい台詞を放ったから斉藤君が顔を赤くして固まってしまったじゃないか。
「照れているのかな? 可愛いね」
「うっ」
「常盤さんっ」
「はははは」
それから上品にそうやって笑うと、またしれっと「いつもみたいに栞って呼んでいいんだよ?」とか言い出す。
「え」
っておま、斉藤君そんな顔で見るな。そうゆうんじゃないから。
「常盤さん、斉藤君を困らせないでくださいよ」
「私としては花菱くんを困らせたいな」
ぞわり。
虫唾が走るとはこういうことだと思い知る。背中が気持ち悪い。
「相変わらずですね、常盤さんは」
「私はいつだって私だよ」
そう涼しげに笑う人は、無駄にかっこよくて余計に腹が立つ。
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