「井原さんは魔法少女」

黛 栫ヰ

なんだこのテンプレのような出会いは。

___このままだと何百年も前に封印したはずのマックローズが復活する。早く新生魔法少女を見つけなくちゃ!
















 「はーあ…今日も暇だったなぁ…。」

こんなこと言えるのは一人で歩いて帰っている時くらいだ。学校では才色兼備で優しい真面目な委員長というイメージが勝手についてるのだが、実際はそんなことない。いつも通りの変哲のない日を過ごし、今日の夕飯は何かな…。とか、家帰ったらゴロゴロしながらゲームしたいな。とか考えてる怠け者だ。礼儀正しいとかも言われてるけど、まあ口は悪いし、喧嘩っ早いし、短気だし、馬鹿不良クソヤンキーから「姉御ねえさん!」とか呼ばれてるし。素行の悪さを言ったらきりがないのだが、みんなはまだ分かってないな。

 そう心の中で嘲笑していた時だった。


 「うっわああああああ!!!!」

私の頭上から甲高い声が響いた。思わず空に向かうと、それと同時にその声は私の額にクリーンヒットした。


 「ひゃん!」

すぐ近くで甲高い声が耳に通る。声の方向を見ると、白い毛玉が落ちていた。「こんなところに落とし物するなんて。」っと毛玉を拾い上げると、毛玉からうさぎの耳のようなものがひょこっと生え、犬のような形になり、極めつけに青い大きな瞳を見開いてこっちを見ると、

「君!魔法少女になろうよ!」

っと非現実的なことを言い始めた。

 「って…、えぇぇぇぇぇ!!!何お前、犬!?うさぎ!?UMA!?てか毛玉じゃねぇのかよ!ぬいぐるみでもねぇのかよ!なんで喋れるんだよ!そんな頭こんがらがってる時に魔法少女とか言われても意味わかんねぇよ!それにお前との出会い方テンプレかよ!」

思わず素が出てしまい少々メタい発言をしてしまったが、周りに特に知ってる人はいないし、一体何なのか分からない奴に言ってるんだからまあいいか。

 「ごめんね、急すぎちゃったね。僕の名前はクウ。妖精さ!ねぇテンプレってなぁに?」

まるで夢を見ているかのような非現実にまばたきの回数を増やす。

 「お前、本当に妖精なのか?テンプレについては気にするな。いずれ分かる。」

 「そうだよ!じゃあ、テンプレについては放っておいて話すね!」

どうであろうとひとまずテンプレの事は終わったし、この状況を受け入れなければならないらしい。

 「それでね!初対面でいきなりお願いなんだけど…君に魔法少女になってほしいんだ!」

このクウとかいう妖精は順序というのが分からないのか、まったく理解のできないお願いをしてきた。

 「なあ、てことはお前が妖精でうちが魔法少女になるってことでいいのか?それにしても魔法少女って一体何なんだよ。それを先に説明してくれ。」

 「そういうことだよ!でね、魔法少女っていうのは、変身して魔法少女になって、悪の組織マックローズを倒すのが役目なんだ!そしてこの世界を救うんだ!それと僕はお前じゃなくてクウ!」


 大体話は理解した。が、変身?悪の組織?世界を救う?どこぞの女児&大きいお兄さん向けアニメですか?

 「てか、その魔法少女ってやつになってマックローズってのを倒して、世界救って、うちになんのメリットがあるんだ?ただ、面倒臭いだけじゃないか?」

クウはそんなうちの魔法少女を否定する言葉に口角を上げ、ニヤリとする。

 「そうだね、確かに面倒臭いところはあるかもしれない。でもね、マックローズを倒していったら、それに応じたお金がファンタニシア王国の全世界魔法少女組合から貰えるんだ。」

この時のクウはなんとも妖精とは言いづらい、悪い顔をしていた。もうお前が腹の中マックローズじゃねぇかよ。っとツッコミをいれたくなったが、抑えておくことにした。

 「お金貰えんのかよ…。それならやってみる価値はあるかも…って!ファンタニシア王国ってどこだよ!」

 「なぁんだ、乗り気になってやってくれると思ったのに。まあ信用できないよね。今の世の中じゃ僕がやってることは新手の詐欺みたいに見えるでしょ?ということで!信用してもらうために、井原いはら 優花ゆか 様をファンタニシア王国にご招待!」


 「ちょっ、おまっ、なんでうちの名前知って…!」

そう言った私の声を消すように辺りが暗転し、気付けば、見た目も匂いも見渡す限り甘ったるいお菓子の国のよう場所ところへ着いていた。

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