運命の歯車

 「やあ、お兄さん。一緒に飲みませんか?」

夜のバーで私と男だけが酒を飲んでいた。顔見知りでない私達は離れていて、店内には心地よいテンポの曲が流れていた。

「お前20じゃないだろ?何故此処にいる」

「いいんですよ、私は」

そうでしょ?とマスターに問い、男に向き直った。

「独りで飲むのもあれですし、良いでしょ?」

と笑えば、男は好きにしろと云うようにそっぽを向いて酒を仰いだ。


そして

私と男は一緒に酒を飲むようになった。

共にいるのが心地良くて、今日も私達は酒を仰いでいた。

「お前ペースが速くないか?」

「良いの…別に。其れより、聞いてよぉ…」

飲みながら愚痴を云っていたが、私のペースは落ちずどんどん空のボトルが増えていった。そして、私は話の途中で寝落ちしてしまった。

其れを見た彼が

「悪い…明日からはもう、

此処には来られないんだ…」

そう呟いて、私の頭を撫でていたなんて

知りもせずに…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る