記憶喪失

昨晩黒猫が行く手を阻んでさてこれは不幸の前触れではないかと疑って夜も眠れず、ずっと起きていて気づくと朝になっていた。会社に行く時刻になっても、不気味なテンションが続き、私は鏡に向かってわっと叫んだり、突然夭折した子猫のことを思い出したりして、はらはらと涙が頬をつたったりして、その日は本当に気がおかしくなっていた。会社から連絡があり、受話器を取る勇気も出ず、その日は一日部屋に篭もっていた。服も着替えず、パジャマのままで私は寂しいアパートの一室でいつの間にか左手にナイフを握っていた。血のしずくが滴り落ちるナイフだ。私はどうしてそれが血だと思ったのか自分でもわからない。そのナイフの血をペロリと私は舐めてみた。今朝寝ぼけて食パンに塗ったいちごジヤムだった。

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