モモと二度寝

 暑すぎず寒すぎずの気温。ふかふかの布団は横になるだけで人を夢の世界に連れていってくれる。睡魔の誘惑になかなか抗えない。とある休日のこと、神奈は布団からなかなか出られずにいた。


 日頃の疲労の色が濃く出るのが休日。夏が過ぎて秋へと移り変わる頃。その心地よい温度と布団の魅力から、神奈は布団を抜け出すことが出来ずにいる。そんな神奈を思ってなのか、飼い猫のモモが枕元に近付いてきた。


「うにゃ?」

「寝よう、モモ」

「にゃ!」


 猫に声をかける神奈も神奈だが、言葉に鳴き声で応じるモモもなかなかだ。モモは人の声を理解したのか、掛け布団の上を歩き出した。少しの間神奈の近くをウロウロすると掛け布団越しに神奈のお腹の上に乗っかる。


 猫特有の高い体温が神奈を眠りへと勧誘してくる。モモは早くもお腹の上でとぐろを巻いて気持ちよさそうに寝始めた。モモを優しく撫でる神奈の目は時折白目になっている。眠過ぎて意識が飛びそうなのだ。やがて、気絶するように夢の世界に旅立った。




 モモが神奈の上で寝るのは珍しいことではない。神奈が起きていればその膝の上で、寝ていればお腹か背中の上で、よく寝る。たまに寝返りに失敗して落っこちるけど、それでも寝続ける。


 これがもう少し寒くなれば、モモは神奈のいる布団の中に入って一緒に寝る。さらに寒くなると暖房で暑いからと布団の中には入らずに神奈に寄り添って掛け布団の上で寝る。モモの寝る場所はいつだって神奈の近くか神奈が見える場所なのだ。


 寝ていると時間が過ぎるのが早いもので。神奈が目覚めたのは、寝てから六時間後のことだった。目が覚めて最初に感じるのはお腹に乗っかったままのモモの温もりだ。神奈が目覚めたと知って、モモも同じタイミングで目を開ける。二つの目がバッチリと合った。


「うーん、よく寝たー。おはよー、モモ」


 神奈の言葉にモモは大きな欠伸をしてから小さく鳴いて答える。かと思えば神奈の上から降りて、神奈の顔や手を舐め始めた。猫の舌のざらついた感じと暖かくて柔らかい感触が気持ちいい。


 モモに応えるように、神奈はその体を目一杯撫でる。もふもふの毛皮に覆われた体が暖かくて気持ちよくて。ついついその体に顔を埋めてしまう。モモは嫌がらずに神奈を受け入れてくれる。そんなところも可愛くて。


 モモと神奈の過ごす休日はまだ、始まったばかり。

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