ブルペンデー&オープナーについて
※解説は間違っている可能性があります。あらかじめ、ご了承ください。
※長い説明が必要ない方は、最初の部分だけ読んでいただければ大丈夫です。
●ブルペンデー&オープナーとは
2018年にメジャーリーグで流行ったピッチャー起用方法で、ブルペンピッチャー(リリーフが本職のピッチャー)が先発する。
・ブルペンデー
リリーフピッチャーが先発する日の総称。また、そのような起用方法の事。先発したピッチャーは1~2イニング程度で交代する。
(広義のブルペンデー)
特に、リリーフピッチャーが初回から少しずつ(1イニング前後)投げて繋いで行く日の事。また、そのような起用方法の事。
(狭義のブルペンデー。現在、この意味で使われる事が多い)
・オープナー
ブルペンデー(広義の方)において先発するピッチャーの事。
※普通の先発ピッチャーは「スターター」と言うが、これと区別するため、ブルペンデーの先発ピッチャーを「オープナー」と呼ぶ。試合の最後を投げる「クローザー」と対になる呼び名でもある。
また、リリーフピッチャーが先発して先発要員の前に1~2イニング程度投げる起用方法の事。先発要員のピッチャーは2人目として登板し、長いイニング(5~6イニング)を投げるのが基本。
(ブルペンデーの一種。現在、この意味で使われる事が多い。「オープナー戦術」や「オープナー作戦」などと言えば意味が通じやすいかもしれない)
先発要員が右ピッチャーだとして、相手の上位打線に左バッター(右ピッチャーに強くて左ピッチャーに弱い)が並んでいるとしたら、左ピッチャーがオープナーとして先発するケースが多い。
●継投の例
普通の継投では、以下のような継投が典型的。
・1~6回:1人目のピッチャー(先発/スターター)
・7回:2人目のピッチャー(リリーフ)
・8回:3人目のピッチャー(リリーフ/セットアッパー)
・9回:4人目のピッチャー(リリーフ/クローザー)
ブルペンデー(狭義)では、例えば、以下のような継投をする。
・1回:1人目のピッチャー(先発登板だけど本職はリリーフ/オープナー)
・2回:2人目のピッチャー(リリーフ)
・3回:3人目のピッチャー(リリーフ)
(中略)
・8回:8人目のピッチャー(リリーフ/セットアッパー)
・9回:9人目のピッチャー(リリーフ/クローザー)
オープナー(ブルペンデーの一種)の例は以下の通り。
・1回:1人目のピッチャー(先発登板だけど本職はリリーフ/オープナー)
・2~6回:2人目のピッチャー(リリーフ登板だけど本職は先発)
・7回:3人目のピッチャー(リリーフ)
・8回:4人目のピッチャー(リリーフ/セットアッパー)
・9回:5人目のピッチャー(リリーフ/クローザー)
●ブルペンデー(狭義)の利点
1試合中に同じバッターと何度も対戦をすると、ピッチャーは打たれやすくなる。
ピッチャーをこまめに交代するブルペンデー(狭義)では、基本的には、ピッチャーは同じバッターと2回以上対戦する事が無い。バッターからすると、打席に立つ度に別のピッチャーと対戦する事になる。
これにより、ピッチャー有利な状態を9イニング続ける事が出来る。
(もちろん、1度だけの対戦でも打たれる時は打たれる)
●ブルペンデー(狭義)の欠点
ブルペンデーに限った事ではないが、ピッチャーを交代する度に「ピッチャー交代が成功するとは限らない」というリスクが生じる。1試合でピッチャーを9人使うとして、9人全員がいいピッチングをするのは難しい。
また、1試合で多くのピッチャーを使うため、ブルペン陣の負担が大きくなる。1日に1イニングだけだとしても、何日も続けていたら体が保たない。
ブルペンデーをやったら、次の日は先発ピッチャーに長いイニングを投げてもらわないと使えるピッチャーがいなくなる。
「こいつは昨日25球投げてるから今日は厳しい。こいつは30球だから無理。こいつも……。使えるリリーフいないじゃん!」ってなってしまう。
●オープナー(ブルペンデーの一種)の利点
オープナー(本職はリリーフの先発)が無失点で1イニングを投げるとすると、対戦するバッターは3~6人。そうなると、2人目のピッチャー(本職は先発)は4~7番から投げ始める事になる。
いきなり4番と対戦する場合もあるが、ランナー無しでの勝負なので、ホームランを打たれても1失点で済む。ヒットで出塁されても4番より弱いバッターとの勝負になるので、1番から始まる攻撃と比べると凌ぎやすい。
オープナーが初回を無失点に抑えられれば、2人目は良い流れの中で登板出来るようになる。
普通の先発ピッチャーだと、厄介な1~4番と3度対戦する事が多い。オープナーに初回を任せられれば、この4人との勝負が2度で済むようになる(もちろん、交代のタイミング次第だが)。下位打線と3度目の対戦になっても、上位打線と比べると攻撃力が劣る分、失点は増えにくい。
強いバッターとの対戦が2度で終わるようにし、打ち込まれる前に新しいピッチャー(バッターが慣れていないピッチャー)と交代して失点を減らしたい。と言うか、上位打線と3度も対戦するなら普通の先発登板とあまり変わらない。オープナーを使う意味が薄れる。
※上位打線と3度目の対戦ともなると、バッターが慣れて来ているので、被打率(=ピッチャーがヒットを打たれる率)が高くなる。
ほとんどの場合、オープナーを使う時の2人目はエース級じゃないピッチャーで、立ち上がりか3巡目に不安があるタイプのピッチャーである。エース級なら普通に先発すると思う。
先発ピッチャーが投げる上で山となるのが「1回」と「6回付近」なのだが、この回は失点が増えやすい。
長いイニングを投げる先発ピッチャーは、1回からエンジン全開では行かない。一方の攻撃側は1番から始まる好打順で点を取りやすい。しかも、近年は2番や3番に4番級のバッターを入れる事が多い。結果、1回に点が入りやすくなる。失点を減らすために、あえて1回に力を入れても良いと思う。
6回付近は先発ピッチャーに疲れが溜まっているイニングであり、1~4番の強いバッターとの対戦が3度目になる辺り。結果、6回付近も点が入りやすくなる。ここも踏ん張り所。
失点しやすい回を乗り切れるかどうかが、そのピッチャーがエース級になれるかどうかに直結すると言っても良いと思う。
エース級になれないピッチャーの時に「オープナーに1回を任せる」「オープナーを使う事で1~4番との3度目の対戦を避ける」といった作戦を取る事で失点を減らせる。
●オープナー(ブルペンデーの一種)の欠点
先発要員のピッチャーが慣れないタイミングで登板する事になる。2回の頭から行けるならマシかもしれないが、バッターの右左の関係で2回途中から登板になる事もある。
例えば、オープナーが右投げで2人目が左投げなら、左バッターが出て来るタイミングで交代という事も多い。オープナーが右バッターを抑えてくれれば良いが、ランナーを出して交代だと2人目は難しい立ち上がりになる。
当然だが、普通に先発すればランナー無しからの登板になる。リリーフ専門のピッチャーでも、ランナーがいる状態での登板は難しい。本職が先発のピッチャーにとっては尚更である。
また、普通に先発すると1番からの対戦なので、対戦する相手が分かった状態で試合に入れる。しかし、オープナーの後を受けての登板だと誰との対戦から始まるか分からないので、試合に入りにくいかもしれない。オープナーが打たれまくったりしたら、悪い流れの中で試合に入る事になる。
さらに、一部の先発ピッチャーがオープナー起用に猛反対している。「俺が登板する日にオープナーを使おうものなら、俺はマウンドに行かずに球場を飛び出すぜ」的な事を言ってる人もいる。
(先発で大活躍している人ほど先発へのこだわりが強いかもしれない。エース級ならオープナーを使う必要も無いと思うけど)
●専門職としてのオープナー
かつては先発ピッチャーが最後まで投げるのが普通の事だった。それが今では投手分業制が当たり前になった。
9回を投げるクローザーが当たり前の存在になったように、初回専門のオープナーも当たり前になる……かは分からないけど、そういうピッチャーがいても面白いと思う。右のオープナーと左のオープナーを用意したり。
優秀なオープナーを取り合う時代が来るかもしれない。来ないかもしれない。
●ブルペンデーの始まり
ブルペンデーを確立したのはタンパベイ・レイズ。最初のブルペンデーはオープナー(ブルペンデーの一種)形式で、先発したピッチャーは1イニングだけ投げて交代した。
その試合に先発したのは、本来はクローザー(9回に投げる)のセルジオ・ロモだった。これがメジャー11年目・589試合目にして初先発だったのだが、次の日も先発登板する。
なお、対戦相手は2日ともロサンゼルス・エンジェルス。上位打線から中軸にかけて右の強打者が多く、右バッターに強いロモ(右ピッチャー)に白羽の矢が立った。
これが2018年5月の19日・20日(現地時間)の事でロモは好投。ブルペンデーに手応えを感じたのか、レイズは以降もブルペンデーを継続的に実施した。それどころか、大半のチームがブルペンデーを導入。ワールドシリーズ進出が懸かるポストシーズンでもブルペンデーがあった。
※19日の試合に2番手として登板したライアン・ヤーブロウ(本来は先発)は若い左ピッチャーで、立ち上がりに不安があった。しかも、相手は右の強打者が並ぶので序盤に失点する可能性が高かった。
最初のブルペンデーの相手となったエンジェルスは、先発ピッチャーにケガ人(大谷翔平とか)が続出したため、ブルペンデーを多くやっていた。「やらざるを得なかった」の方が正しいかもしれない。
レイズがブルペンデーを導入した理由は主に2つ。
まず、レイズは先発ピッチャーが不足していた。
これはシーズン開幕前から分かっていた事で、普通なら「前に先発をやっていたリリーフを先発に配置換え」「マイナーの先発をメジャーに昇格させる」「他のチーム(もしくは自由契約)から先発を獲得する」といった対応をする。
ところが、ケビン・キャッシュ監督は「普通の先発4回+ブルペンデー1回」というローテーションの構想を発表した。多くの人が「え? マジっすか?」と思ったと思う。
※通常、メジャーリーグでは先発5人でローテーションを組む。
もう1つの理由は、初回の失点の多さ。これはレイズに限った話ではなく、先述のように初回は失点が多くなりがち。この失点を減らすために、リリーフエースに初回を任せようと考えた。
先発不足という台所事情があったとは言え、初回の失点を減らす事が勝利に繋がるのではないかという考えでブルペンデーが導入された。
ブルペンデー導入で話題になったレイズは、シーズン中盤にエースを放出。これもまた話題になった。
ポストシーズン進出を諦めたチームが主力を放出するのはよくある事だが……。よりにもよって、貴重な先発ピッチャーを放出してしまう。ますますブルペンデー頼みとなった感がある。
エース放出の他、先発ピッチャー陣にケガ人が出て先発ピッチャー0になるという異常事態にも陥った。ブルペンデーやるしかない。
結局、レイズは162試合中57試合でブルペンデーを実施。最初のブルペンデー(44試合目)からに限定すると、119試合中57試合がブルペンデーだった。ほぼ半分である。
レイズはチーム防御率が非常に良くなった(リーグ2位の成績だった)のだが、これはブルペンデーの影響があると思われる。
勝利数も90まで行き、アメリカンリーグ東地区では3位だったが、他の地区だったら地区優勝を狙えたレベルである。ポストシーズン進出に備えて戦力を補強していたら、ワイルドカードでポストシーズン進出も夢ではなかったはず。
先発だけでなく野手陣の戦力もイマイチだったので、ここまでレイズが勝つと予想した人は少なかったと思う。
※レイズは、最初の43試合は21勝22敗。ブルペンデーを始めてからの119試合は69勝50敗で、勝率は約58%。勝率58%となると、仮にシーズン頭からブルペンデーをやっていたなら、162試合で93~4勝していた計算になる。
※地区2位は100勝のヤンキースで、1位は108勝のレッドソックス。レッドソックスはメジャー最高勝率で、ワールドチャンピオンにもなった。同じ地区に100勝チームが2つというのは非常に珍しい。
●ショートスターター
2019年、オープナーに似た「ショートスターター(短いイニングを投げる先発ピッチャー)」を日本ハムが使っている。
オープナーは1~2イニング程度で交代するが、ショートスターターは打者9人を目安に交代する。つまり、ショートスターターは1番バッターから9番バッターまでの第1打席を担当し、第2打席からは次のピッチャーが担当する。
※必ず9人で交代する訳ではないようで、最初のショートスターターは10人(1番と2回)対戦した。
シーズンを通してショートスターターを使うようだが、日本球界全体を巻き込む大きな流れとなるのか否か。
また、日本ハムのショートスターターとは違うが、シアトル・マリナーズに移籍した菊池雄星が1イニング限定の先発登板をした。シーズンを通して何度かやるとスコット・サービス監督は発表している。
これは調整のための登板で、メジャーリーグに移籍したばかりの菊池がケガをしないように配慮したもの。これまでに日本人先発ピッチャーのケガが相次いでいるが、それを防ぐ目的がある。
日本人ピッチャーがケガをしやすい主な理由は、登板間隔の違いとボールの違い。
日本では中5~6日の登板(先発登板したら次の登板まで5~6日休む)が一般的だが、アメリカでは中4日が一般的。休みが1~2日少ないので、日本時代より疲れが抜けにくくなる。
しかも、アメリカは広いので移動が大変になる。西海岸(ロサンゼルスとか)と東海岸(ニューヨークとか)では時差が3時間あるくらいに広い。移動だけでも疲れが溜まりやすくなる。
ボールに関しては、メジャーリーグ用はプロ野球用よりも大きくて重いという違いもあるが、メジャーリーグ用はツルツルしていて滑りやすい。日本よりも空気が乾燥している事もあり、これも滑りやすさの原因となる。
しっかり持たないと投げにくいのだが、日本時代には使わなかった筋力を使う事になるので、ヒジなどにかかる負荷が大きくなる。1度の負荷は大した事がなくても、100球×30試合ともなると結構なダメージになり得る。
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