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「で、何の用だよ。まだ顔面工事終わってねぇのに」
「やだもう」
なにが、やだもう、だ。こってこての厚化粧をしなくてはいけないと言うのに、ミケはまだすっぴん(髭剃り済み)のままだ。いくらオネェスナックだといっても顔面がおっさんじゃダメだと思うけど?
「はなちゃんに相談があって来たのよぉ」
「なんだよ、とうとう整形する決心がついたのか」
「パパとママから貰ったこの顔にメスなんていれないわよっ。こう見えたって気に入っているんだからね! この顔!」
「あーはいはい」
何万回も聞いたっての。
「で。相談ってなんなわけ」
まだアニメが続いているようで、その音声が店に薄く響いている。あんな名台詞だが、そのアニメは実は料理がテーマになっているものだ。美味しい料理(味付け)の真実はいつもだいたいひとつってやつ。味付けに正解はないからなんだろうけど、その名台詞もどうなんだろうか。
「あのね」
「なに」
「これ、買おうと思うんだけど、どうかし「やめとけ」
「「えーっ!!」」
ミケが言い終わる前に言い放つと、ミケと同時に斉藤君が声を上げた。
「即答ですか」
「即答だよ、直感だよ」
「なんで!」
「なんでってお前」
ミケが突き出したチラシには“これで無駄毛と永遠にさようならっ!”と文句の書かれた脱毛器のものだった。しかも値段がイチキュッパだと。
「これで青髭ともおさらばよ!」
「いやいやいや、だいたい安すぎだろ、それ。二万切ってるとか安心できねぇよ」
「だって、ここ見てよ! これ! 大量入荷及び型落ち品につきって書いてあるじゃないッ! しかも品質保証付きよ!」
「脱毛器ってもっと高いもんだろ。型落ちっつってもその光脱毛器だったらもっとするもんだって」
「なによ、知ってる風な口ぶりね」
「知ってるも何も」
「何よ」
「だって俺脱毛してるし」
「「えええええーーー!!」」
「なんだよ斉藤君まで」
「マスター脱毛してるんですか!? 確かに顔とか腕とか綺麗ですけど」
「なんだよ照れるな」
「そんなことより聞いてないわよ! あたし! 脱毛してるだなんて!」
「言ってねぇし」
「可愛くないわね!」
「男だって脱毛する時代なわけ。で、それよりももっといいのあるから賢明になってやめなさい」
そう言うと、ミケは複雑な顔で頷いた。
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