第五話
僕は最悪の夢から眼が覚めた。
そして最悪の現実と直面する事になる。
楓が幼女を抱え、号泣している。
幼女は息も絶え絶え、大量に吐血しながら、しかし口元は笑っていた。
――――それは【鬼門】首領、槐様だった。
僕が気絶している間に起こった事を先に記述しておかなければなるまい。
櫻が裏切り、王宮を倒壊させたすぐ後の事である。
槐様は【柊】復活を唱え、戦力を集め始めた。
事前の通告も無しに攻撃された、それは鬼の間で結ばれた規則上、奇襲を受けたも同じ。
奇襲という戦法は、鬼の義理に反する。
怒りに拳を
が、それもすべて
古参のうち半数が、既に買収され【柊】の側に寝返った伏兵だったのだ。
これを【鬼の恥晒し】として憤怒した槐様は、残った鬼達を率いて自ら先陣を切った。
だが皮肉にも、奴らは『柊の葉』を鬼門の至るところに撒き、決死の特攻に打って出たのである。
柊の葉が刺さり、それが原因でほとんどの鬼が倒れてしまった槐様の陣営。
無論槐様も重症だった。が、
だがとうとう、槐様も力尽きた。
【柊】の
「槐様――――!?」
僕は気絶から目覚めたての不明瞭な頭で、楓の膝の上で横たわる槐様に駆け寄った。
「……永史か。余は闘い、そして死ぬ。
だからよう聞け。1度しか言わぬからの」
虫の息で、槐様は言葉を紡ぐ。
「オヌシの祖母は……山狩チサじゃの?」
「はい」
「チサから曾祖父の話を聞いた事は?」
不意を突かれた。
無い。
そう言えば僕は祖母から先祖の話を聞いた事は全く無いのである。
大抵、その類の話は漁河干物店の恭雄爺ちゃんから聞いていた。
――――何故恭雄爺ちゃんが?
「気付いたか。おかしいじゃろう……?
何故チサがオヌシに、先祖の事を語らなかったか。
それは奴の体にも流れているからじゃ。
鬼の、――――酒呑童子の血が」
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