酒呑童女お財布日記【2/3完結】

アーモンド

第1章 学生、鬼と会う事

第1話

時は武士もののふが世、坂田さかたの金時きんときという武士がその首を獲り退治したとされる鬼が居た。


名を酒呑童子しゅてんどうじというその鬼は、にもかくにも三度の飯より酒が好きな鬼であったと伝えられる。


で、そんな酒呑童子。実は死んでいない。

彼……いや『彼女』は、今も何処かに生きている。人目に付かないように、ひっそりと山奥で――――。




「……ぷはぁぁぁっ!!うめぇ!!」

びんごと日本酒をあおっていた。


「……だがしっかし、暇じゃのぅ……?」


どうやらここには彼女以外にも同種がいるようだが、薄暗くて姿は確認できない。


「そうだな。久方振りに降りぬか?街に」

その提案は他の同種を奮わせる。

「それは如何いかがなものかね?面倒なんだけど」

例外もいるようだ。

「……偵察ていさつ……1人……行けば良い……」


「うむ、それがいの。

――――ではいざ、尋常じんじょうに…………っ」


そう言い、長とおぼしき少女が拳をかかげる。

他の奴も一斉に振り上げ、そして叫んだ。


「じゃんけん…………ポンっ!!!」


実に平和な争いである。

たった1回で、その争いは勝敗を決した。

「……では偵察隊はオヌシじゃの、『かえで』」

「仕方ないなぁ、行って来るよ」




北の地、北海道。

この時期は既に紅葉し切った木も見られ、中には枯れ始めのものもある。

何となく寂しさを感じるこの季節、海の幸に恵まれたとある街の高校に彼は居た。


後々ある騒動に巻き込まれる本作の主人公、ふくともえいである。

彼は両親が共働きである為、小さな酒屋を営む祖父母の元で育っていた。

故にお酒には詳しく、特に孫に甘い祖母には8つの頃から利き酒を仕込まれた。


※良い子は真似しないでね!


さてそんな永史君だが、彼は同級生のイケイケなテンションについていけない奴だった。


クラスで見た事は無いだろうか?

ワイワイしている輪には入らず、独りぼっちという訳ではないが少数で固まって教室の窓際に居る奴を。

彼はつまり、そういう奴である。


彼は今日も、放課後の過ごし方を脳内で計画中だった。

美術部には所属しているものの幽霊部員なので、基本的に帰宅部と何ら遜色そんしょくはない。

来年の今頃は大学受験だというのに塾にも行かず、のうのうと夕方を過ごすのが彼の人生だった。


が、その日々がとうとう終わる事をその時、彼は知るよしも無かった。

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