第3話
「俺、変わった?変わったよな、絶対」
俺は隣を歩く幼馴染を見た。聖司は、どこが?何が?と言う感じで首を傾げる。俺はため息をつきつつ、空に向かってうんと伸びをする。寒いと体も、心も縮こまってしまう気がして。一週間は長い。特に月曜日は。昨日さくらに会ったばかりなのに、もう次の日曜日が待ち遠しくなっている。できることなら、毎日毎日会っていたい。せめて休日は土曜も日曜もずっと一緒にいたい。普通の恋人同士のように。ふつうの。
右を歩く聖司の気配を感じる。変わった、よな。自分がこんな恋愛に納得するなんて思いもよらなかったけど。否、今も納得はしていないのだろうけれど。ぽつりとつぶやく。
「自分が何番目の彼氏かなんて分からないけど」
仕方ないよな。好きになっちゃったんだから。これでさくらを繋ぎ止める事ができるのなら。情けないけれど。恋をして人は成長すると言うけれど。恋をしている時の方が人間は情けなくなる。そう思う。それに、どうして彼女を責められるだろう。さくらは誠実なのだ。誰に対しても。だから一人を深く愛せないのだ。最初は分からなかった。分かるわけがないと思った。実際、付き合い始めて五ヶ月たった今も納得はできていない。けれど、だんだんと彼女の気持ちを、彼女自身を理解してあげたいと思い始めている。
聖司は分かっていたと言うのだろうか。だからこいつはすぐに了承したのだろうか。こんな恋愛の形を。再び黙々と歩く聖司を横目で見た。彼は何もかもが薄い。髪の色も瞳の色も肌の色も。人形のように端整で目立つ外見なのに、何故か存在感も薄いのだ。そうしてそれを一向に気にもしていない。雰囲気が同じだ。__彼女と。
思わずぽかりと彼の頭をなぐった。聖司は、な、何、ときょとんとこちらを見ている。
「お前のどこがいいんだろうな。雰囲気が華奢なだけじゃないか」
何となく腹立たしくなって、何か言いかけた彼を無視して校舎へと急いだ。吐く息が白い。白い空気。
空気が、似ているんだ。二人とも。
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