『アルファポリス奨励賞』三人。

浅野新

プロローグ

「明日は雪みたいね」

 窓から夜景を眺める僕に、さくらさんは聖司君、はい、と紅茶の入ったマグカップを差し出した。

「少しだけど。温まると思うわ」

 ありがとう、と一口飲む。体を巡る液体が僕をじんわりと温めてゆく。ゆっくり紅茶を味わいながら彼女といた今日と言う日の、余韻を全身で感じ取る。決して忘れる事がないように。

 しばらくして僕は、じゃあ、またとダウンジャケットを羽織った。うん、とさくらさんが微笑む。僕は玄関を出て、彼女に笑い返した。ゆっくりと閉じられるドアを見ながら、明日も彼女が、今日と同じように笑っていて欲しい、と思う。いつでも。誰と過ごしている時でも。例えそれが、別の恋人であろうと。

明日は曜(よう)がここを訪れるだろう。

さくらさんには恋人が二人いる。僕と、曜が。

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