『アルファポリス奨励賞』三人。
浅野新
プロローグ
「明日は雪みたいね」
窓から夜景を眺める僕に、さくらさんは聖司君、はい、と紅茶の入ったマグカップを差し出した。
「少しだけど。温まると思うわ」
ありがとう、と一口飲む。体を巡る液体が僕をじんわりと温めてゆく。ゆっくり紅茶を味わいながら彼女といた今日と言う日の、余韻を全身で感じ取る。決して忘れる事がないように。
しばらくして僕は、じゃあ、またとダウンジャケットを羽織った。うん、とさくらさんが微笑む。僕は玄関を出て、彼女に笑い返した。ゆっくりと閉じられるドアを見ながら、明日も彼女が、今日と同じように笑っていて欲しい、と思う。いつでも。誰と過ごしている時でも。例えそれが、別の恋人であろうと。
明日は曜(よう)がここを訪れるだろう。
さくらさんには恋人が二人いる。僕と、曜が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます