第7話 忙しい午後

 13時30分、鉱山の小屋のドーアから第4倉庫へ移動。


 台車の上には段ボール箱が置かれ、その中にはいくつかの防具やコイン、アクセサリーや魔石などが入れられている。ギルドから派遣される冒険者が、午前中にこの部屋の中で集めてくれたものだ。

 今はもう、この階には人影はなく、ときおり何処からともなく魔物が現れるくらい。


「じゃあ、少し危ないけどここで待っててね。ガットとズーラが守ってくれるから。さあ、ダダは私と一緒に行くわよ!」




 13時35分、第4倉庫のドーアからアシドへ、美香とダダが移動。


「おや、ガットとズーラはどうしたんだ?」


 顔なじみの見張り番が声を掛けてくるが、返事も「後で!」と適当に流し、ギルドまで駆ける。




 13時42分、最短記録でギルドに到着。


 受付に軽く手を振って、そのまま二階のギルド長室に押しかける。


「おいおい、一応受付を通してくれよ」


「時間ないので。ダダとギルド長二人で最短何分で私のダンジョンの最下層に着きますか?」


「え、いや、最短ってならギルドで保管している非常用の鍵を使えばすぐに行けるが……なにがあ」


「分かりました。じゃあダダ、状況説明お願い。2時間後に第4倉庫で集合。ギルド長も支度しながら話を聞いてくださいね、では私は先に!」




 13時58分、アシドのドーアから第4倉庫へ、美香だけ移動。


「ガット、ズーラ、2時間後にここで集合だから、それまでお願い。花ちゃん、ちょっとだけ待っててね。おばちゃん、仕事を済ませてからまた来るから!」



 14時05分、第4倉庫からヒマワリマートの事務室へ。


 いつものように荷物を下ろし、タイムカードを押して挨拶する。普段なら雑談したり晩御飯の買い物をするのだが、今日は早々に挨拶をして家に帰る。


「さて慌てて帰ったものの、晩御飯は何にしようかしら……」


 冷蔵庫の中から鶏肉を出して、あとはニンジンとじゃがいもと玉ねぎ。

 こんな日は、カレーを作ろう。

 ふふんと鼻歌を歌いながら、さっさと野菜を刻んでいった。




 15時05分、良平と浩平が帰宅。


「やったあ、カレーだー!ただいまー」


「ねえねえ、見て!テントウ虫見つけた。冬なのに!」


「はいはい、先に手を洗って。浩平は、テントウムシ冬眠中なんだから、起こしちゃだめよ。早く庭に逃がしてきなさい」


「はーい」「はーい」


 カレーは出来上がったので、いったん火を止めておく。

 炊飯器はタイマーをセットした。

 手を洗っておやつを食べ始めた二人の向かいに、美香も座ってじっと顔を見た。


「ねえ、お願いがあるの」


「うん?なあに?」「むぐぅ」


「ママは今から、ちょっと出かけるんだけど、二人でお留守番できる?」


 おやつを口いっぱいにほおばって、返事ができずに激しく頷く二人。


「パパは帰りが8時頃よ。ママはなるべく早く帰ろうと思っているけど、もし6時過ぎても帰らなかったら、先にカレー食べててくれる?レンジでチンするんだけど、良平くん、浩平の分まで準備できるかな?」


「んぐ。大丈夫だよ。どこにいくの?」


「あのね、ママに小さな女の子の友達ができたの。その子は今、迷子になっててとっても困ってるんだって。だから知り合いのおじちゃんにお願いして、一緒にどうしたら良いか相談することにしたの」


「えーー、お友達?うちにも来る?」


 やったあ、やったあと喜ぶ子供たちに、今日は来ませんと何とか言い含めて時計を見れば、15時30分。

 慌てて、向こうの世界に持っていく荷物をまとめて、鍵を持って神社に走った。



 そして15時55分。律儀に賽銭箱に小銭を投げ込んでお参りをする美香。


「どうか、花ちゃんの家が早く見つかりますように。それから、私にドーアを使わせてくださいね」


 周りに人目がないことを確認して、美香は社のドーアのなかに頭を突っ込んだ。


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