第5話 ようやく異世界を認識

 ここに来てようやく、思いついたことがある。

「ここって、もしかして異世界なのかしら?最近良平と浩平が見ているアニメにあったわ。魔法とか、犬みたいな耳の、こう……こんなに犬じゃなかったけど」

「俺の種族のことなら、コボルト族と言う。俺は剣士で、小さくてもリザードマンにだって負けはしない。喋るのは苦手だがよろしく頼む」

 ガットが胸を反らせて言った。

 か……かわいい。

 日頃、虫や爬虫類ばかりを目の前に突き出されている美香にとって、ガットはまさに天使だった。


「ところで、助けて欲しい事って何なの?」

 美香の質問に、ダダが羽をバサバサと広げながら話してくれる。ダダには羽の他にきちんと2本の腕があるが、羽も手のように広げたり閉じたりして、雄弁に語っている。

「ああ、実は今、世界は魔物の脅威にさらされている。あちらこちらで魔物が大発生して、多くの住民が被害を受けているんだ。特に今回の災害は、我々が所属する国、サリチル国近辺での被害が大きい。そこで賢者殿が予言をされ、我らがここへ派遣されたのだ。すなわち、オー……美香に助けを求めるようにと」

「はあ」

「もし助けてもらえるならば、報酬を出したいと思う。もちろん、出来る事には限度があるが……美香にとってはどのようなものが価値があるのだろうか?生贄とかであれば、くっ、わ、私が」

「……何か今、物騒なこと言ったわね。生贄なんていらないわよ」

 そう言いながらも、目は喋っているダダではなく、しっかりとガットを追う美香だった。


……

……

……

「生贄はいりませんから。ところで魔物っていうのは?」

ガットがふーっと息を吐いて肩の力を抜いた。よほど怖い思いをしたらしい。

魔物の説明はズーラがしてくれた。

「魔物には様々な種類があります。このダンジョンにもよく出る、フレイムやラット、イブリースなどは、美香もよく倒しているので知っていると思いますが」

「ああ、あれが。じゃあ、あなた方とあの黒い悪魔や火の玉やネズミは、仲間じゃないわけかしら」

「もちろんです。我々は誇り高き人類なのです」

 ズーラが頷きながら言った。

 なるほど。ここではトカゲ人間も鳥人間もチワワも人類なのだ。



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