第14話 「DMATがやって来る」
「サンタが街にやってくる」ではありません。災害訓練のお話です。
各自治体では、毎年、災害拠点病院で、集団災害緊急医療救護訓練を行っています。大地震などが起きた場合を想定して、DMATとともに、応急処置やトリアージが円滑に行われるよう訓練します。一般の方も負傷者役で参加して下さいますし、地方のニュースとしてTVで放送されることもあります。
自治体の指定している災害拠点病院では、年に一回、順番に行われています。
今年は、私の勤務先の病院になりました。
一応、東日本大震災では
院長より、一言。
「だいたいの手順は、You Tubeで勉強して」
You Tubeですか……。
確かに、過去の訓練の様子を記録し、公開している動画が沢山あります。一般市民参加のもの、看護学校で行われたもの、など。一般の方が参加している訓練風景は、どこかのんびりとしていて、なごみます。
「ふんふん、なるほど」と、みんなで視聴し、イメージトレーニングに励みます(注3)。
某国立病院の災害訓練動画を拝見したときです。私たちの表情が凍りました。
――映画『ST〇R WARS』を
緊迫した、カッコイイBGMが流れています。
レスキュー隊が到着し、病院前に停めてある自動車に駆け寄ります。下敷きにされている人(人形です)を救うため、エアジャッキで持ち上げます(見物人がいっぱい)。
無事に救急車に搬送を済ませると、今度は運転席に取り残された人を救出すべく……スプレッターで、ドアを破壊していますよ……。屋根を叩き、切断し、ウインチでダッシュボードをけん引し、運転者(人形)を車から救出しました(おおーっと歓声があがりました)。
一般のボランティアの方が、負傷者役で登場。トリアージが始まります。「十五秒でやって!」指示が飛びます。骨折している方は、血糊がべったり……「ううーん、痛いよう。助けて~」と、迫真の演技です。
病棟ではお産が始まっています。看護師さんが妊婦さんを励ましています。あ、無事に産まれました(赤ちゃんは人形です)。
外から、続々と患者さまが運ばれてきました。野戦病院のようです。緊急手術が必要な患者さまは、道路標識の折れたポールが腹部に突き刺さっています。
災害範囲が広域すぎて、重傷者を受け入れることが出来ません。空港へ搬送し、他地域の応援を要請します――。
ちょっと待って! このレベルでやるの? ヘリ飛ばすの? 自動車こわすのっ? ――観ていた一同が、ざわつきました。
院長は、あっさりと
「あ、車は壊しません。ヘリコプターも飛ばしません。でも、ヘリポートまでは運んでね」
地震だと、エレベーターが止まる設定です。ヘリポートのある屋上まで、患者さまを担いで階段を登るわけですね……。
不安でいっぱいな一同。かくして、災害訓練のための訓練を、毎日せっせと行うことになりました。が、頑張ります(涙)。
**********************************************************************************
(注1)トリアージ
負傷者の状態に応じて、緊急度を別けることを言います。自分で歩ける軽傷者には緑、緊急性はないが自力で動けない(骨折など)方には黄色、呼吸状態が悪いなど緊急性のある方には赤、死亡確認された方には黒色のタグをつけさせてもらいます。外傷の場合、状態は刻々と変化しますので(緑だった人、黄色の人が赤になる)、注意が必要です。
ちなみに、死体役の方は、霊安室に安置されるまでの間、静かに死んだふりをしています。
(注2)JMAT
日本医師会災害医療チームJapan Medical Association Team、と言います。災害発生から72時間以上が経過し、急性期の患者数が落ち着いてきたころ、撤退を始めるDMATと交代する形で被災地に入り、地域医療体制が整うまで支援を行います。
(注3)イメージトレーニングに励む
訓練動画だけでなく、東日本大震災時の石巻赤十字病院の初動記録、熊本地震の際の熊本赤十字病院、済生会熊本病院の初動記録も、You Tubeで観ることが出来ます。ご興味のある方は、ぜひ視聴なさってください。検証のために記録されたものだと思いますが、凄いです。
訓練自体は、
翌日、参加したほぼ全員が、筋肉痛になりました orz
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます