第七回 歴史小説と時代小説、そして僕が時代小説を選んだ理由

 歴史小説と時代小説。


 このエッセイを読んでいる人はその違いを説明出来ると思うが、僕の解釈で言うと、歴史小説は「史実と史実を繋ぎ合わせる物語」或いは「あったかもしれない、もう一つの史実を描く物語」であり、時代小説は「その時代に生きた人々の心情に寄り添った物語」或いは、「史実という大河から離れた場所にいる人々の営みを描いた物語」だと思っている。


 そして、僕は歴史小説より時代小説を書く事を好んでいる。それは史実と史実を繋ぎ合わせる物語よりも、より自由度が高く、かつ心情を深く切り込んだ時代小説の方が、作業として楽しめるからだ。歴史小説はどうしても史実という制約がありますが、時代小説は特にない。時に時代考証も無視している。


 ただ、そこで僕は一つだけ注意している所がある。それは「現代人」の心情を落とし込むという事。当時の人の感覚で描いても、共感は得られません。現代人でも理解できる、「あ~、そういう気持ちわかる!」というポイントが無ければ、時代小説は面白くないといいますか、成り立たないと思います。

 人生の苦楽を描いた池波正太郎も、サラリーマンの悲哀を描いた藤沢周平も、生きる厳しさを描いた山本周五郎も、そこがあったからこそリスペクトされたのではないか。

 極論を申せば、時代小説は現代小説とも言えよう。


 だから、僕はWEBの時代小説で感想を書く場合に、「人間を描いているかどうか?」というポイントを注視している。



 今後も、陰にしろ陽にしろ、人の気持ちに寄り添ったものを書ければいいな。

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