サイキッカーらいち
結城藍人
第1話 正義の超能力少女
「
「らいち君、僕たちは遊びに来てるんじゃないんだよ」
せっかくあたしが勇気を出して誘ってみたのに、あたしのパートナーの
ここは、東京都心部にほど近いところにある遊園地。昔は一番人気だった野球チームの本拠地のドーム球場があったり、特撮ヒーローのショーをやってるシアターが併設されてたりする。
あたしの名前は
今、こうやって遊園地をぶらついてるのも、右巳さんの言うように本当は遊びじゃないんだ。パトロールなんだよ。
とある悪の秘密結社がテロ活動を行おうとしてるって情報が入ったんで、それを阻止するために警戒してるんだ。
え、何でただの女子高生がそんなことしてるのかって?
それはね……あたしが
あ、今あきれたでしょ? そりゃそうだよね。あたしだって
だけどね、今から半年前、あたしのセカイは変わっちゃったんだ。超能力者が支配する世界を作ろうとしている秘密結社『
そのとき、何もわからなくて混乱していたあたしを助けてくれたのが、政府の秘密超能力諜報機関『
本当はね、右巳さんはあたしには戦って欲しくないみたい。だけど、あたしの超能力が実戦向きなんで、立場上止められないって悩んでるっぽいの。右巳さんを悩ませたくはないけど、でもあたしはやっぱり右巳さんと一緒に戦いたい。
だって、右巳さんはあたしにとって特別な人だから。
中学のとき、ふとしたはずみでクラスで孤立してぼっちになっちゃって、すごくネガティブな気持ちになってたあたしを励ましてくれたのが、当時あたしが通ってた塾の講師のアルバイトをしてた大学生の右巳さんだったんだ。
「ぼっちだって別にいいじゃないか。僕だって友だちなんかひとりもいないけど、別に気にしてないしね」
それが口先だけの励ましじゃないことは、普段の様子を見てたら、よくわかったの。人当たりはすごくいいのに、他の先生と群れたりしないで、ひとり静かに本を読んでるような人だった。そんな右巳さんの励ましに、あたしはすっごく救われたんだよ。
あたしが今みたいに、いつもポジティブ元気でいられるのは、右巳さんのおかげなんだ。だから、少しでも右巳さんの力になりたい。その右巳さんが偶然にもPI機関のエージェントになってて、超能力に目覚めて混乱してたあたしを、もう一度助けてくれたんだ。
これって、どう考えても運命でしょ!? もう協力しないわけにはいかないよねっ!!
というわけで、あたしたちは今、遊園地でPSの超能力テロを警戒してるんだ。だけど、パトロール中だからって一回くらい何か遊具に乗ってもバチは当たらないと思うんだけどな。ただ歩き回ってるだけってのも不自然だと思うし。
あーあ、本当なら、こんな物騒なシチュエーションじゃなくて右巳さんと一緒に来たかったな……今回は余計なお邪魔虫もひとりついてきてるし。
「来たっぽいですよぉ!」
ちょうどそのとき、そのお邪魔虫が声をかけてきた。PI機関の研究員のひとり
今も、あたしたちの後ろで発明品の新型超能力センサーとかいうので周囲を探ってたみたいなんだけど、何か見つけたっぽい。『何か』じゃないね……敵だ。
「どっちよ、ユッキー?」
「三時の方角、距離五万ミリメートルに敵影見ゆ!」
「素直に右側五十メートルって言えないの!?」
これだからオタクってヤツは……
呆れながらも、あたしはすぐに戦闘態勢に入る!
そのために、その場でしゃがんで膝下まで折って履いていた両脚のソックスを、ホットパンツから出ている腿のところまで引っ張り上げる。
この腿のあたりまである長いソックスは『サイハイソックス』っていうの。小学生の頃に読んだ童話『長靴下のピッピ』が履いてたんだ。ピッピのいつもポジティブ元気なところにあこがれて、自分でもそうなりたいと思って履きだしたのがきっかけ。それから、制服で禁止されてるとき以外はずっと履いてるお気に入りなんだ。
だけど、超能力に目覚めてからは、せっかくの長いソックスなのに、折って履かないといけなくなっちゃったんだよね。
だって、あたしの超能力の発動条件ってサイハイソックスを履いてることなんだもん!
さ、これで準備はできたから、見せちゃおうかな、あたしの
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