まだ名前のない私

ぽてと

第1話 死にそうになった日

ほんの数日前、私は死にそうになった。

お昼におにぎりを、一つ食べ終わりかけた時だった。


咳が出て、止まらなくて、食べてるものも出てきそうで、なんとか洗面台にたどり着き、

ただただ、止まる気配を見せるまで咳き込む。


顔が熱い。

目が飛び出そう。

手が痺れて動かない。

出てくる痰には血液が混入していた。


ああ、顔の毛細血管が、ブチブチキレている感覚がする。


やがて咳は治まったが、息はうまく出来ず、目は開かなかった。


「大丈夫?」

声をかけてきた先輩は、慌てて車椅子を持ちに走った。


…病院でよかったな…


なんとなくここが病院だった事を思い出す。


まあ、病院だからなんとかなるだろう。


そう思った時、医者が大声を出した。

「喉頭ロックだぞ!ボスミンは⁉︎」

なんだ、救急対応か、


死ぬのか。


ボスミンを注射で打つなんて、打たなかったら死ぬ時ぐらいしかない。


私はボスミンを打つから助かるのか。

あ、じゃあ死なないか。


とりとめなくそんな事を考えた。


ボスミンを注射したから助かりました。


そんな日もあるよね。

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