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晴海さんは恋多き女性だ。それだけ聞くとただの悪女かと思うが、実はそうではない。惚れっぽいところはあるかもしれないが、実はどの彼も本当に心から好いているのだ。
「元彼の事も本当に好きだったんです。でも、今彼に出会った時ビビって来たんです。この人が運命の人だって反応するんですよ。もちろん元彼と別れるのは辛いですけど、別れた方がお互いの為になるから・・・」
晴海さんが店に通うようになってから五人目の彼の報告を受けた時、彼女はそう言ったのだ。
どの彼との思い出も大切なモノなんです。と目を輝かせて言った。
「まぁ、尻軽って影で言われてることも知ってるんですけどね」
その後そう言った彼女の表情がとても印象的だった。いつも朗らかでニコニコしている彼女が、眉根を寄せて泣きそうだったから。
自由気ままに恋人をとっかえひっかえしているのかと思っていたけど、実は違って本当の彼女は運命の恋を求める乙女だっただけなのだ。
「彼こそ運命の相手だといいですね」
「大丈夫です。きっとサスケ君が運命の人ですよ。だって私たちお似合だもん」
ふふふ、と笑う彼女に、本当にサスケ君が運命の相手だといいなと思う。
理想を求めるだけの子供、なんて思われるかもしれないが、それを突き通すには度胸と覚悟が必要だ。それから心の強さと体力。恋をすると言うのはそう言ったものを犠牲にするものだから。
だからこそ、春海さんは強いなと思うし、凄いなと思う。俺はそんな覚悟を持っていないから。
「サスケ君とは同じビルで働いていて、彼は一つ下のフロアなんですけど、実はヒロミチ君と別れるまでお話したことなかったんですよ。ヒロミチ君は運命の相手じゃないって分かって悲しかったけど別れた後、急に仲良くなったんです。ふふ、不思議ですよね。まるでサスケ君と結ばれるために神様が相手が違うよって教えてくれたみたいに」
前回来た時に本当に心からヒロミチ君を愛していたのに、今夜はサスケ君を愛している。
春海さんのそのどの彼にも変わらぬ熱愛。単純にすごいと思う。
「私は晴海さんが幸せになってもらえるように祈っています」
「いいです、いいです。マスターが私の為に祈らなくても大丈夫ですよ。絶対に運命の相手と結ばれますから。っていうか、もう結ばれますから」
自信満々の春海さん。どうか次の来店時にもサスケさんの話が聞けたらいいなと思う。
「そうですね」
「私には祈ってもらわなくてもいいので、マスターはマスターの運命の相手と結ばれるように祈ってください」
ね。と小首を傾げる春海さんは本当に魅力的に映った。
「お酒が私の運命の相手ですから」
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