この続きあなたならどう書きますか?

けろよん

第1話 START

お題


 私の名前は、ユリエ・エクソメイル。この世界の神様である。

 でも、最近の世界はつまらない。なんたって、一向に魔王に挑もうとする人たちがいないんだもん。

 私の能力『アブソウル』を使えればよかったんだけど、生憎、私の能力は、私が地上に降りた時にしか使えない。

 あ、ちなみに 私の能力『アブソウル』は、絶対遵守。私の言ったことは、全て聞いてしまうというすごい能力。

 まあ、そんな能力持ってたところで、使う時なんてないんだけどね。

 住人に魔王に、戦いに行かせるようの命令すればいいと思うでしょ。でも、それじゃあ面白くないの。

 だって、それじゃあ、見ているこっちが面白くないし。

 で、今日も今日とて、暇だなーと思って、世界の様子をみていると。

 異世界のアストラルゲートが開いた。

 アストラルゲートが開いたと言うことは、訪問者死者が来たということだ。

 アストラルゲートが出てきた人は、髪が少し短くて、少し、つり目の少し怖いという印象を受ける容姿だった。

 そして、その男の子は、口を開いた。

「あの、ここどこですか?」

「あ、ここですか。ここは、死者を異世界へと繋ぐ、通路みたいなものですよ」

「へえーそうなんだ。ってことは、つまり、俺も行かされるわけ?その異世界に」

「はい」

「嫌だね」

 ん?なにを言っているのかな?この彼は?

「ねえ、聞いてるの?」

「……あ、はい勿論」

「じゃあ、教えてくれないかな?異世界に行かないくてもいい条件というやらを」

「いや、そんな方法ないですから」

「へえーそなんだ。じゃあ、これは、なにかな?」

 少年の右手には、私の魔導書が握られていた。

「って、それどこで拾ったの⁉」

「え、そんなのそこに落ちてたけど」

 っく、私としたことが。大事な魔導書を置いておくとは。まあ、いいのです。今私の能力『アブソウル』を使って、異世界に行ってもらいますから。

 さっきは、地上に降りないと使えないと言ったけど、それには、例外がある。

 ──死者であるであること。

 という条件が。

 つまり、今の私には、使える。

「能力『アブソウル』を展開。命令:今から異世界アクアに行きなさい」

 結論を言おう。

 なんにも変化は起きなかった。

 なんで、なにも起こらないのよ~~~~!!!

 なに、この子死者じゃないの!神様とかいう気。ふざけんじゃないわよ!私この能力使うと、

 顔つきからなにからないまで幼くなっちゃうんだから!

「なに、それ!能力『アブソウル』を展開って。しかも、命令とか言ってたわりになにも起こってないし。それに、なんか幼女になってるし。笑えるわ!」

「なんで、私の言うことを聞いてくれないのよ⁉」

「いや、知らんけど。まあ、ともかく、一つだけ言っといてやるよ。今の方が可愛いぞ」

「なんでよ~~~!!!神様の言うことは絶対なんだからー!!!」


続き


「絶対か。フッ」

 少年は何か暗い溜息をついた。私は何か気になって訊いた。

「どうしたのよ。急にたそがれちゃってさ」

「俺にも絶対だと信じていたことがあったのさ」

「へえ、なになに?」

 私は好奇心を刺激されて訊ねた。何しろここは退屈な場所だ。興味を引いてくれるものなら大歓迎だ。

 少年は少し間を置いてぽつりと呟くように答えた。

「戦争から帰ったら結婚しようと約束した相手がいたんだ」

「ああ、絶対に結婚出来ないフラグよねえ、それ。絶対よね~」

 私は両腕を組んでうんうんと頷いたのだが、それが少年には意外だったようだ。いきなり私の両肩に掴みかかってきて訴えてきた。

「何で絶対なんだよ。意味分かんねえよ! 俺絶対に帰るつもりだったのによ!」

「何でって……お約束だから?」

 やだこの少年恐い。目がマジになっている。私は結構驚いた。

「そんな約束を誰が決めたんだよ!」

「えっと、神様じゃないかなあ」

 私は迫力に押されながら、しどろもどろになって答えた。彼の力が強まった。

「痛い痛い。私の肩痛い!」

「つまりお前か!」

「ちゃうちゃう。私より偉い上の神様がおるんや!」

 パニックのあまりつい関西弁が出てしまう。

 少年はやっと肩を掴んだ手を離してくれた。そして、決意に燃えた眼差しで拳を握った。

「神め! 許さん! 奴の元まで案内しろ!」

「ええーーー」

 私はめんどくさいと思いながらも、乗り掛かった舟だし気分転換にはなりそうだ。案内することにしたのだった。


 神の宮殿。

 雲の広がるいわゆる天界という場所にそれはある。

 私は少年を案内して進んでいく。

 荘厳な柱の並ぶ最奥の大広間の玉座に神は偉そうに腰かけていた。

 実際に偉いのだから当然だろう。でっぷりと太った白い髭の老人が鋭い眼差しで睨み付けてくる。

 威厳のある姿だ。私は背筋を伸ばしながら、少年に道を譲った。

「奴が神か!」

 訊かなくても分かるだろうに、わざわざ訊くの勘弁して欲しい。

「はい、あの方が私より偉い神です。無礼はしないでくださいね」

 せっかく私も神様になれたのに降格されてはたまったものではない。

 私はなるべく気配を消すように努力しながら、何か面白いことが起きないかなと期待した。

 神は威圧的に少年を睨んだ。

「人間が何をしにここへ来た!」

「お前を倒しにきたんだよ!」

「くだらん戯言を。ユリエ・エクソメイル。後でお前にも罰を与えるからな!」

「ひええ!」

 気配を消してたのに、とばっちりは勘弁して欲しかった。

 少年は神を前にしても全く怖気づいてはいなかった。彼は静かな怒りに燃えていた。

「余裕があるのかよ。おっさん。これから俺にぶっ殺される奴がよ」

「お前には天罰が必要のようだ。神の怒りを受けるがいい!」

 神が立ち上がり、杖を掲げた。凄まじい光のエネルギーが複雑な装飾の施された杖の先端に集中していく。

 光の渦が風となって宮殿内を駆け巡る。杖の先端に浮かび上がった光の球が大きくなっていく。凄まじい力だ。

 私は飛ばされそうになったが、少年は平然と立っている。

 少年にはアブソウルが効かなかった。もしかして能力を無効化する能力を持っているのだろうか。私は期待してわくわくと状況を見守った。

 神は杖を少年に向けた。そこには凄まじいまでの光のエネルギーがある。

「原子の塵となって消え去るがいい!!」

「スリップ」

 あっさりとした声だった。

 神はすっ転んだ。エネルギー消えた。

「神死ね。死ね」

 転んで起き上がれなくなっていた神は撲殺されていった。何回も棍棒が振り下ろされた。ちょっと時間が掛かったけど死んだ。

 一仕事終えた少年は神の死体を蹴って、私の方を振り返った。その眼差しに私は射抜かれた。

「まあ、素敵」

 興奮を感じるなんていつ以来だろう。私の鼓動は跳ね上がった。

「あんた死体を操れるんだろう。こいつ邪魔だからどっかやってよ」

「はいは~い。魔王退治よろー」

 私は神様の死体に命令して魔王退治に向かわせた。

 そして、少年は神になった。

 私より偉い神に。

 でも、それもいいかと私は思った。

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