第5話
ここでも最初に動いたのは佐々木君でした。夜中に豚の動きが少し緩やかになった頃を見計らって脱いだ自分のシャツを被せて捕らえました。そうしてシャツの上から馬乗りになって上から包丁でめった刺しです。シャツがあるとやりにくいでしょうが、初めて殺すんですから姿が見えない方がやりやすいでしょう。彼はなかなか冷静ですよ。ただ調理は大変でしたね。さすがに現在の高校生で豚をさばける子はいないでしょう?
佐々木君も、血まみれのシャツを取るのは怖かったんでしょう。布でくるんだまま豚をキッチンに持って来たはいいけれど、それを見下ろしたまましばらく突っ立っていました。分かったんでしょう。まあ魚はなんとかなったとしても豚はそうはいかない。臓物を取らなきゃいけないと。
シャツをかぶせたままでまな板の上に置いて、足を一本一本切り落とすたび吐きそうな顔をしていました。そのまま半分だけシャツをめくり、顔を背けながらなんとか腹は割けたんですけどね、かき出した臓物を見た途端、たまらず嘔吐したんですよ。せっかくの食料に半分吐瀉物がつきましてね。それを見て再び嘔吐しました。もう、顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら流し場に豚を持って行きましてね、水で洗い流しながら時々吐いて、を繰り返してなんとか臓物を捨て豚を洗ってましたね。豚がきれいになった所でぐったりとしてしまって、その日はそのままベッドに倒れこみましたよ。翌日顔色は悪かったですが、豚をさらに小さく切ってお湯で煮たりフライパンで焼いたりして半分飲み込むように食べていました。
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