第4話

次の課題は子豚でした。ええ、もちろん生きてます。これでも譲歩はしたんですよ。最初は大人でいく予定でしたからね。ただ倒すのが大変だろうと言う事で、まだ小さい豚にしてあげました。

 佐々木君と篠崎君はすぐに理解しました。二人とも、豚を入れた途端固まっていましたから。他の生徒達も本心は分かっていたと思いますよ。ただ信じたくはない。だから最初は飯をやったり一緒に遊んだりして現実逃避していましたね。しかし嫌でも分かり始める。いつまで待っても食材は他に来ませんから。だからと言って皆殺すのは怖気づくんですよ。元気いっぱいに走り回っている子豚ですからね。大概の者は長期戦を始めます。何日かすれば豚が疲れるか、うまくいけば餓死してくれないかと思うわけです。佐々木君と篠崎君も様子を見ていました。

 しかしそれでは意味がない。だから生徒達が寝ている間に豚を取り替えるんです。苛立つでしょう。苛立ちますよ。いつまで待っても豚は疲れない。どころかいつまでも元気一杯で部屋中を走り回りあげくの果てに糞尿を撒き散らす。部屋は汚れ放題です。自分は米しか食べられずふらふらなのに相手は元気の塊であり、迷惑しか持ち込まない。

 それを繰り返す事で皆気づくんですよ。全力で殺しにかからないと自分が倒れるって。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る