空の月には届かない

カゲトモ

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秋らしい真っ青な空が広がっていたのに、店を出るときにはすっかりと肌寒くなっていた。今日は中秋の名月、夜へのグラデーションの空にお月様が一番星と共に輝いている。

この時期は何を着たらいいのか分からなくなるのが難儀だ。女性みたいにカーディガンを常時持っているわけにもいかないし。

 やっぱり薄手の長袖にすればよかったかな、なんて七分袖を引っ張りつつ思う。持っていた小さな紙袋が揺れた。

 その中身は本日二件目のカフェで購入したケーキだ。その店はオーガニックが売りの紅茶専門店で茶菓子も全てその店舗で作られている。仰々しく飾られているわけでないが、丁寧なデコレーションはとても魅力的だ。しかも味もいい。俺も良くテイクアウトして家で食べていたりする。

 酒飲みでも甘党派の酒飲みなのだ。

 しかし、今日は俺の為のものじゃない。これはこれから会いに行く人のためのものだ。

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