第10話 『千秋の本屋と無口なくまの子。』
◇きっかけ
九月後半、コンテストに投稿するための短編を書いていました。
十八禁媒体で活躍する魔法少女がかつての仲間をぶち殺しながら異世界へむけて高飛びをしようとする、セックスアンドバイオレンスな内容の小説です。
書いているうちは楽しかったのですが、どうにもこうにも「全世界の女児パイセンに顔向けできない物語を作ってしまった……」という気持ちが強まってにっちもさっちもいかなくなってしまいました(私は自分の書くものは概ね女児と女児の魂を持つ人に捧げる気持ちで書いているところがあるのですよ、あんなのでも)。
そこから逃れるために構想したのがこのお話です。とにかくぬいぐるみやお布団のように、ぬくもりがあって安心できる物語を作りたくなったのです。
もともとは、長くても十話くらいで終わるふわっとホンワカした物語を構想していたのですが、気づいたら私の中で二番目に長い物語になっていました。まさかひと月近くつきあうことになろうとは。
構想段階では、本屋ごっこをしている女の子のところに山から妖怪の子がやってくるというようなファンタジーでしたが、まあこのような次第となりました。
以下は千秋の物語を作るにあたって頭にあったものなどの解説です。
蛇足には関心がない、あるいは物語に作者自らが解説されるの興覚めするというタイプの方、ごめんなさい。
◇朝ドラ
夜に更新していたのに、イメージしていたのは朝ドラでした。
朝ドラを視聴するようになって数年経ちますが、名作といわれるものの中には見るものに魔法的な何かを強烈に感じさせるものがあります。別に朝ドラに限った話ではなく、優れた連続ドラマには作中に超常現象的な要素が無くてもマジカルなものを視聴者に印象づける何かが備わっているのではないかと推測されるのですが、毎日付き合う朝ドラではそれが特に顕著なような気がしたのでした。
それを自分なりに再現してみたいという思いがありました。再現できていたかどうかはお読みになられた方の判断に託すしかありません。
超常現象は一切起きない物語ですが、ファンタジーとはなにか、魔法とは何かを常に意識していた物語でした。
◇逆張り
第一話に顕著ですが、田舎を舞台にした物語の逆張りをやってみたいというチャレンジ欲がありました。
私自身が使い物にならない田舎の出であるので、トトロ的な物語には若干コンプレックスを感じないわけではなかったのですよ……。
千秋は作中ではなんだか変な趣味を持つ妙な子という感じになりましたが、社会的には「大人しいモブ」「その他大勢」な子です。スクールカースト的には中間くらいに位置するような。
自分の過去を振り返ると、こういう子たちに救われた面が多々あったので感謝の念を込めたかったところがあります。
また、フリーダムな叔父さんとしっかりした甥っ子姪っ子の話というのは世の中には結構あるように思いますが(そういえば朝ドラ「ひよっこ」には「朝ドラ名物の変なおじさん」というセリフも出てきましたね。朝ドラのおじさんの多くは叔父さんではなく小父さんなんでしょうけれど)、叔母さんというと何故か姪っ子におしゃれや恋の手ほどきをしたり……という展開になりがちなのも常々やや不満がありました。
ミサコという子供っぽいしすぐにぐちぐちいうポンコツなアラサー女性が生まれたのはそういうことです。まあ大体、女の人もそんなに恋だお洒落だのについて語れる人ばかりではないということです。
◇女系家族
私自身が女性が多い家族で育ったもので、あの特有のダラーっとした感じを物語にしてみたかったのでした。
盆暮れの際に姉妹の配偶者が集ってぎこちなく話し合う様子なども傍目には面白いので物語に組み込みたかったのですが、序盤でそこは断念しました。いつかやってみたいテーマではあります。
以下は反省点や裏話など……
・空気を読むのに長けていて察しはいいが大人の話に参加するのをよしとせずそれほど機転が利く子でもない、という千秋の視点だけで極力語るという制約を設けたたため、ミサコとイシクラさんの関係を語るのに結構難儀しました。
千秋視点のみという制約も貫き通せたかというと、うーん……ですし。
・マイちゃんは多少ファンタジックな人でもよいという許可をだして登場させたキャラクターでしたが、ファンタジックすぎてデウスエクスマキナみが出てしまったような……。
・千秋の父さんはもうちょっと目立たせたかったです。
・みふゆは漢字で書くと普通に「美冬」です。
・フミコおばさんはオタサーの姫だったという過去があり旦那さんは意図せずクラッシュさせたサークルの仲間という、使いどころのない設定がありました。
・ミサコおばさんが読んでる本は実在します。機会があれば紹介します。
・連載中、百合タグをつけるかどうかで悩んでいました。今でも悩んでいます……。識者の方の意見をお聞きしたいところです。
とりあえずここまで。
物語に関しては別に、毎日更新してみて発見したことなどもあったのですが、その辺はまた後日まとめてみたいと思います。
地味でちまちまして派手なことがひとつも起こらないこのようなお話に付き合ってくださった皆様方に感謝を。
ありがとうございました。
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