第21話 アースタートル

 アースタートルの卵が動きを見せたのは、卵を生命の揺り籠に置いて二日が過ぎた頃のことだった。

 ゆらり、と大きく揺れた卵の表面に、ぴしりと小さな罅割れが入る。

 卵の罅割れがどんどん大きくなっていく様子を、僕はメネと肩を並べて見守っていた。

「これで三匹目のエルかー」

 僕はわくわくしながら、卵から小さな鼻が覗くのを見つめた。

 アースタートルって名前だから亀っぽい姿かなって思ってたけど、予想通りだ。この鼻の形は紛れもない亀のものだ。

「どんどん牧場が広くなってくね」

「そうだねー。今のところエルの属性はみんなバラバラだもんね」

 メネもじっと卵の様子に目を向けている。

「交配するようになったら、同じ属性のエルが増えるよ。そうしたら牧場も賑やかになるよ」

「そうなるようにお世話頑張るよ」

 卵が動いて三十分が経過した頃。無事に、エルは誕生した。

 アースタートルは、甲羅の模様が綺麗な山吹色の亀だった。

 ごつごつした甲羅は隆起した山のようで、触るとちょっぴりつるつるしている。

 ホシガメ。あれによく似た見た目のリクガメだ。

 指南書によると、アースタートルは土属性のエルで、成長したら三メートルほどの大きさになるらしい。

 それくらいの大きさになったら、僕が乗れるようになるかもしれないね。

 名前はもう決めてある。アースタートルだから、アースだ。

 アースは手足を引っ込めた格好で、首だけを伸ばして、こちらの様子をじっと伺っていた。

 亀だから他のエルよりも警戒心が強いのかもしれない。

「大丈夫だよ」

 僕は揺り籠からアースを抱き上げて、顔を覗き込んだ。

 アースが微妙に首を引っ込める。しかし黒曜石のような綺麗な瞳は、僕のことをしっかりと見つめている。

 そのままじっと待っていると、アースが静かに首を伸ばしてきた。

「これから宜しくね」

 ちょん、と鼻先に指先を触れて、アースを床に下ろしてやる。

 アースはしばらく周囲の様子を見ていたが、此処が安全だと理解したのか、ゆっくりと手足を伸ばして床を歩き始めた。

「また牧場作りしないとね」

「土の牧場だね。場所は風の牧場の隣でいいの?」

「うん」

 実は、牧場の配置についてはあまり考えていなかったりする。

 牧場は牧場で固めよう、と考えているくらいで、属性の配置についてまでは気にしていないのが現状だ。

 隣り合った属性によって土地に満ちた魔力のバランスが崩れる、とか問題が起きるようなら一考したかもしれないが、そうでないならあまり気にする必要はないんじゃないか、というのが僕の考えだ。

 僕は見栄えのいい牧場作りを目指してるわけじゃないからね。

 アイテムボックスから土の属性石を引っ張り出したメネが、早速作りに行こうと提案してきた。

 僕はアースの甲羅を撫でて、メネから属性石を受け取り腰を上げた。

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