毛色

 お気に入りの服は、赤、緑、黄色、青、黒のストライプのニット。

 お気に入りのアーティストは日本では知名度の低い女優兼任の18歳の女性。

 バラエティーよりは洋画を見るし、J-POPよりは洋楽を聞く。

 スマホを見るより本を読む。


――――私は気づいていた。

 他人と違うことに。


 だって、同級生はみんな昨日のバラエティーの話をする。J-POPのよくわからないアーティストにきゃあきゃあと言い、実写化の話をしている。

 私はどれにも入れずいつも零れ落ちる。篩いにかけられたら一発で弾かれるような個性。

 雑誌は嫌いだし買うなら好きな作家の単行本を買うから読んだことがなくて流行りがわからないとか、J-POPは好きになれないから洋楽を聞くとか、そういうちょっと“ちがう”ことをしていると、この社会では批判を浴びる。

 面と向かって批判するわけじゃない。裏でひそひそと、じめじめと。

 それが嫌で正面切って言うと、さめざめと泣かれ裏に持ち越される。


 何も気づかないうちに周りから人がいなくなり、たった一人になって初めて違いは悪だと気づく。

 私は自分の生き方や好みや考えを曲げたくなくて意固地になる。すると周りは歩み寄ることを辞めてさらに溝が深まる。

 深い暗闇に取り残されたような気持になってとっくに破り捨てた殻を探してきて、つなぎ合わせてまた被る。そうやって生きていく。

 なぜこんなところにいるんだろうと考える。

 死んだら楽だと考える。

 でも私には勇気がない。


 ここから飛び降りたり手首を切ったり薬を飲む勇気がない。だからきっとまだ私は弱っていないと自己完結して歩いていく。


 自己肯定感は、皆無に近い。


 自分が人と違うことをすると否定されると知らないうちは、好きな服を好きなように着る。

 結局それでも同じ番組同じ絵本同じ教育を受けて、量産されていく、

“日本人”という人種。


 いつになったら自己表現に文句を言われなくなるのだろう、

 いつになったら自己表現について話ができるのだろう、

 いつになったら“若者=ダメ”というレッテルから逃げられるのだろう。


そんなことを考えながら、明日もまた歩いていく。

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