初心忘れるべからず

カゲトモ

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「そう言えば、どうしてマスターはバーテンになろうって思ったの?」 

「私ですか?」

 急に何を言い出すのかと思えば、なんだ、藪から棒に。蘭子さんとは結構長い付き合いだと思っていたけど、そんな話はしたことなかったっけ?

 なんて思いながら、グラスを磨く。

「そうそう、マスターって出身どこなの?」

「日本です」

「そう言うこと言ってんじゃないの」

「この辺りですよ、この辺り」

 詳しくは言わないけど、間違ってもない。

「それじゃあずっとこの辺りに住んでいるの?」

「いえ。一時海寄りの地域に住んでいましたよ」

「海寄り? え、どこ?」

「それから就職する時にこっちに帰って来たんです」

「へぇー。そうなんだ」

「蘭子さんは「就職って最初はバーテンじゃなかったの?」

 聞いちゃいねぇ。まぁいい。もう慣れっこだ。

「最初からバーテンですよ」

「じゃぁどこか学校へ行っていたの?」

「いいえ、とあるお店で修業させてもらっていました」

「え? どこどこ」

 蘭子さんはいつも以上に食い気味に質問をしてくる。なんだ暇なのかそうなのか。今は蘭子さんしか客が居ないから仕方なく相手してやるよ。なんて。

「ここからちょっと行ったところです。でももう移転しちゃったのでないんですけれど」

「へぇーそうなんだー。じゃぁ高校卒業してバーテンになったの?」

「えぇ、まぁ。そんなところです」

「ねぇねぇ、なんでバーテンになろうと思ったの?」

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