第277話 いよいよ完成
リバーストライクはメーターケーブルの接続を終えて試運転が出来るようになった。正直時間と手間がかかり過ぎる。メーターの作動は今後の課題だ。
「リバースが無いけど仕方ないか」
敷地内でグルグル走る分には要らないが、普段使う場合はどうだろうか。初めて作る商品なので今一つ使い方を想像できない。今回は3段ミッションで組んだけれど、加速の繋がりを考えると4段ミッションの方が絶対に良いと思う。だけど今回は動くのに書類起こしが出来ず廃車になったカブの供養でもある。部品取りにしか出来ないカブが生まれ変わったと思えば溶鉱炉へ向かうであろうフレームも浮かばれる事だろう。
「リーンが出来んから独特な乗り味やな」
後ろ2輪のモンキー風トライクと比べると左右前方が踏ん張る感じとなるのではないだろうか。転倒の危険は無いとは言えないが、少しはマシな気がする。今の時期に登録すると税金を1年分払う事になるので損かと思ったが、安浦さんに聞いたら構わないとの事だったので登録して試乗させてもらう事にした。自賠責は3年。この自賠責が満期になるまで壊れない様に組めたか、それは俺にも分からない。ただ、ベストは尽くした。
『スーパーカブがどうしてミニカーなんれふかぁ?』なんて窓口で言われたけど、もうどうでもいい。市役所の職員の質が落ちたのは我々市民の責任だ。
「ブレーキOK、アイドリングOK、クラッチもOK。灯火類異常なし……行くか」
真新しい水色のナンバーを付けて町内を走り回る。若干ローギヤード気味だが車体が重いから仕方がないだろう。これで不満なら4段ミッションと言う手もある。ブレーキを心配していたが、これも異常なし。片効きする事も無く、ブレーキング時にハンドルを取られる事は無い。3輪自転車の経験が生きた。
「初めての試みやから、しっかりとチェックしてアフターも気を付けんとアカンな」
ミニバギーはデファレンシャルギヤ周辺にトラブルが起こると聞いた事が有る。このリバーストライクは後輪は1本だからデファレンシャルギヤは無い。だからデフのトラブルは無い。ベアリングやジョイントなどのトラブルが起こりそうな所は全部国産の部品に交換した。普段の中古バイクより桁違いに高価だが、値段に見合った価値と信頼性は保証する。そして、責任も取る。
(せっかく出たついでや、高村社長にも見てもらおう)
高村ボデーさんへ舵を切る。
「こんにちは、社長はいらっしゃいますか?」
「はい、あ、それって社長が触ってた奴ですね。呼んで来ますね」
若い衆が店の奥へ駆けて行った。キビキビした動きが高村ボデー(有)の社員に対する教育方針を表している。
「よっ! ※けったいなもんを作ったな!」※面白い・へんてこなの意味
「出来ました」
挨拶もそこそこに社長はトライクに乗った。
「面白い乗りもんやな。これは普通免許で乗れるんか?」
「乗れますよ。イイでしょ」
「良いな……うん、良いな!」
高村社長のお墨付きをもらい、店まで戻る。最高速は頑張ってメーター読みで60㎞出るか出ないかだ。これで不満だったらエンジンをオーバーホールしてハイコンプピストンと4段ミッションを組むことにしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます