第95話 ドライブレコーダーが欲しい
市役所所有の行政バスから絵里にぶつけられた酒ビン。
幸い絵里は無事でしたが、万が一のことを考えた大島サイクルの常連は
ドライブレコーダーを付ける相談の為に大島サイクルを訪れました。
ちなみに亮二は別の店で買った為、そちらへ行きました。
「勝手に余所で部品付けてたら店も気分悪いやろ?」
亮二は義理堅い男です。
「おっちゃ~ん。ドライブレコーダーおくれ~」
「そんなもん急に言われて『はいどうぞ』は無理やで。
今、何台仕入れようか考えてたところや。」
正直な話、最低でも高校生5人には買ってもらいたい。
こいつらは運転が未熟だ。そこへ付け込んでくる悪い奴が居るかもしれない。
今の今都は昔に比べると平和だが油断は出来ない。
今は知らないが、昔の今都は自転車で走っていると猫の死骸を放り込まれたり
していた。轢いたりすれば『ワレ、落とし前付けぇや』と住民が出てくる。
そんな街だった。市になった所で変わっていないと思う。
今都は『修羅の街』『欲望の街』だ。用心にやり過ぎは無い。
とは言え、身の安全の為とはいえ、2万円は高校生にとって安い金額ではない。
速人と綾ちゃんは、この前の臨時収入で買うと言ってくれた。
理恵は何とか買える位の金額は残っているらしい。
絵里ちゃんは
轟さんの表情が暗い。貯めているお小遣いでは足りないらしい。
そこで、足りない代金の分はウチでバイトしてもらう事にした。
バイトの内容は、食事の買い物と料理をやってもらう事。
店が休みの日にレコーダーを5台も取り付けていると家事をする時間が無い。
昼にみんなで食べる食事を作るのをやってもらう。
「それにしても、あれやな。市役所のバスの利用者は酷いな。
理恵達と大津のイベントへ行った時は叩かれそうになるし、絵里ちゃんは
納車早々にライトに酒ビンをぶつけられたし。どうなってるんや?」
「中学の時、学校行事で乗ったけど酔っ払いみたいな臭いがしてました」
「臭いです~酔いました~」
「亮二なんか酔って吐きかけたから中学は自転車通学やったもんね」
「確かに臭いますね。お酒ですか?市のバスで?」
「椅子なんか砂だらけ。運転手さんが『今都中を乗せたから』って言ってました。『今都が使うとバスが痛む』ですって」
どうやら酷い利用者が多いらしい。
安曇河の人間なら行政バスの利用規則は守るはずだが・・・
合併後は妙にバスが傷んだ気がする。
「とにかく、入ったら連絡する。その週の日曜に取付けする。
それまではくれぐれも注意して運転する様に。」
「は~い。」と返事をしたのち、5人はそれぞれ帰っていった。
どうしてこの街は物騒になってしまったのか?
高嶋郡が合併したのは間違っていたのではと思う。ろくなことが無い。
店を閉めた後、パソコンから業者に発注した。
2~3日後には届くだろう。それまで事故が無い事を祈ろう。
ドライブレコーダーなんか付けた事が無意味と思えるのが良い。
そんな事を思いながら、今日も一人で夕食を済ませるのだった。
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