第12話 △マークとウインカーブザー②

 原付2種はフロントフェンダー先端に白いライン、リヤフェンダーに白い△マークが付いている。


 メーカーが出す51~125㏄クラスのバイクなら初めから付いているか付く様にデザインされているが、ラインナップが50ccオンリーのモンキー・ゴリラは△をつける場所が無い。強引に貼り付けてしまうのも一つの手段だが無くても良いなら貼り付けなくても良いかと今までは貼らなかった。


 表示義務があるなら申請時に市役所が渡すだろう。今までそう思っていたが、合併後の市役所職員の様子を見ると不安になる。噂ではCB1300を原付で登録できたらしい。


 理恵が検挙されそうになったのでナンバー下に△を貼るプレートを作ろうとしたがアフターメーカーから出ているようだ。注文書を取り寄せてFAXで注文した。数日後には届くだろう。


 今日は自転車の修理が多い。パンク修理・ブレーキのワイヤー交換。ウチで取り扱う自転車は安くないけど整備さえすれば長持ちする。たまに引っ越しで持って行けない御宅から引き取ることはあるけど、整備すれば乗る分には問題ない。中古車として売り出せば利益になる。


 出来上がった中古サイクルを並べているとお客さんが来た。


「すいません。ここはバイクも扱っていると聞いたのですが……」


 客層が子供か年寄りな大島サイクルには珍しい青年のお客さんだ。


「いらっしゃい。うちはミニバイクは整備をしています。大きいのは無理です」


 整備中の速人のバイクを見ると青年は嬉しそうな顔をした。


「あ、可愛い♡これ、売り物ですか?」


 女子の様な反応だ。


「これは修理の手伝いをしているバイクです。事情が在りましてね」


 あまり詳しく言うのはプライバシーに関わるから言わない。


「あ、すいません。スーパーカブなんですけど診てもらえますか?」


 顔が真っ赤だ。恥ずかしがり屋さんかな?モンキーを見て可愛いと思うのは普通だと思う。恥ずかしがらなくても良いと思うけどな。


「1人でやっている店なので、持って来てもらえたら出来ますよ」

「あ、じゃあ持ってきます」


 どうやらご近所に越してきた青年らしい。


 5町1村が合併した高嶋市。引き取りをするには広すぎるのだ。安曇河町内だけならまだしも片道30分掛けて引取りなんてできない。特に今都いまづみたいな遠い所に限って引き取りが多い。だから引取りは辞めたのだ。


 暫くしてスーパーカブと共に青年が現れた。バイクを押す姿もイケメンである。

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