第二十話 ブタっぽい俺の夜の森② おやつ肉

松明をくくり付けたハルバードを手に蝙蝠を求めて夜の森に分け入った俺は、細い目をさらに細めて蝙蝠たちを探そうとするが、元々瞼の脂肪の圧迫を受けてただでさえ細い目をさらに細くした俺の目では、夜の森を自由に飛び回る夜闇と同色の蝙蝠たちを見つけることができなかった。


「ああもうっ見つからねぇっ一体あいつらどこに隠れてやがる!?」


 俺は愚痴りながらも、蝙蝠たちを見つけようと、さらに森の深くへと分け入って歩いていると、俺は突然背後から伸し掛かられる感覚に襲われる。


 この感覚はこの前蝙蝠に襲われた時と同じ感覚だ!


「百八十キロボディップレス!」


 そう確信した俺は奴を逃がすまいと、思いっきり全体重をかけて、背中から百八十キロ(実際もっとある)背面ボディプレスを繰り出した。


 俺の背中にのしかかってきた奴は、俺の全体重をもろに受けて、「ぎいいい」という断末魔の声を上げながら押し潰されたようだった。


 獲物をしとめた俺は、すぐさま立ち上がると仕留めた獲物が蝙蝠であるかどうか確認するために立ち上がり、仕留めた獲物が転がっていると思われる地面に松明を向けた。


 そこには、俺の予想通りの奴。つまり直径一メートル体重二十、三十キロほどの蝙蝠が転がっていたのだった。


「おっしっ蝙蝠おやつ肉Getだぜ!」


 俺は地面に転がる蝙蝠を肩に担ぎ上げて喜びの勝鬨を上げた。


 なぜ俺がすぐさま倒した蝙蝠肉を担ぎ上げたのかだって? その理由は簡単だ。昼間倒したオークのように、夜とはいえ灰色狼やほかのモンスターたちに、蝙蝠肉が横取りされたらたまらないからだ。


 そうして俺は当初の目的通りに、おやつである蝙蝠肉をゲットしたのだった。


 本来なら危険な夜の森でこれ以上徘徊する理由もないのだが、俺の胃袋がたった一匹の蝙蝠肉を手に入れた程度で満たされるわけがないために、俺は危険な夜の森をさらに徘徊することにした。


「そういえば昼間こいつらに襲われたのもこの辺りだったよな? さっきのあたりにはいなかったのにこの辺りにいるってことは、縄張りでもあんのかな?」


 もしそうなら、俺が昼間獣耳の女の子と会ったところか、オークたちと戦ったあたりに行けば見つかるかな? 甘い考えを抱いた俺はさらに森の深くへと進んでいった。


 あれから、俺の体目当てにへばりついてきた蝙蝠を、俺が自慢の脂肪ッパラのボディブレスで潰したり、襲いかかってきた奴をハルバードで突き刺したり薙ぎ払ったりして、五匹ほど捕まえることに成功した。


「うーんもう少しほしいなあ」


 蝙蝠たちの巨体を担ぎながら再び歩き出そうとしたら、コッケーと鶏の様な声が森に響き渡った。なんだなんだ辺りを警戒するも特に何者の気配もなく空がしらみ始めただけだった。


「ああ夜明けか」


 そう俺が自分をおとりに五匹ほどの蝙蝠狩りに夢中になっている間に、夜が明けてしまったのだった。


 夜明けだとすると夜行性の蝙蝠は巣に帰るよな? それに、棒有名番組みたくあまり完徹は得意じゃなかった俺は、仕留めた蝙蝠の数に物足りなさを感じながらも、俺は最初に仕留めたのと合わせて合計六体になった巨大な蝙蝠を重ねて担ぎ直し、いったん森を出ていつもの丸焼き道具の置いてある野営地に戻ったのだった。

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