第十六話 ブタっぽい俺の奇跡生還
「ここは?」
俺は眠たい目をこすりこすり目を開けた。
視界が暗い。そう思いつつ、俺は視界の前にある暗闇を引き剥がすかのように、暗闇をずらした。
すると、俺の視界にはさんさんと降り注ぐ太陽光を遮る木の枝と、木の枝の隙間を縫うようにして降り注ぐ太陽光が入ってくる。
俺はいつものように、ランニングからはみ出ている下腹をかきむしりながら上半身を起き上がらせた。
「ここはどこだ?」
俺が起き上がると、俺の体を覆い隠すように被せられていた草が、脇腹のわきへと落ちる。
「草? なんで草がこんなところに?」
俺は疑問に思いながらも、あることを思い出していた。
「そうだっオークっ!」
オークの集団と戦っていたことを思い出した俺は、すぐさまその場に立ち上がろうとするが、思い出したかのように不意に訪れた痛みによって顔をしかめる。
「いたっ!?」
痛みを覚えた俺は、自分が致命傷たりえる幾つもの傷を負っていることを思い出していた。
そういえば俺あの豚どもに、後頭部を殴られて、腹を槍で刺された後に背中を左肩から斜めに袈裟斬りされたんだった。
そのことを思い出した俺は、まず後頭部に触れてみる。
うん。血は止まってる。それに痛みもほぼない。次は槍に刺された腹だ。
俺は槍に差された腹の傷に視線を向けて、そこでようやく自分が上半身裸であったことを思い出した。
そう言えば、助けた女の子にランニングをかけてやったから、俺今上半身裸だったんだっけ。
今更ながらに自分が裸だったことを思い出した俺は、芋ずる式に、草むらに倒れ込み気を失うまでに起こった出来事を思い出していた。
そう言えば、武装してるオークたちに襲われてる女の子を何とか助けたまではよかったんだよな。だけどその後オークたちに追われて逃げたんだけど、急に腹が減ってきてもう逃げきれないと、助けた女の子を草むらに寝かせてモンスターたちから隠すための気休めにランニングをかけた後、覚悟を決めてオークたちに立ち向かったんだっけ。
で、そのあと何とか襲い来るオークたちを倒した後に俺は気を失ったんだった。
そのことを思い出した俺は、助けた女の子の安否を確認しようと、周辺を見渡すが、残念ながら助けた女の子の姿は見当たらなかった。
夢……か?
いや夢じゃなかったはずだ。
俺は先ほど武装オークたちと繰り広げた死闘で負った腹の傷をなで回しながら呟いた。
あれそういえば、そんなに深く刺さっていなかったとはいっても、槍に刺されたはずの腹にあまり痛みがなかった。
「ん? どういうことだ?」
疑問に思った俺は、槍に刺されたはずの自分の腹を見つめる。
「へ!?」
そこで俺は驚きの声をあげた。
「傷が塞がってきてる!?」
そう、なぜだかはわからないが、俺の腹にできたはずの槍の刺し傷が、血が流れ出していないばかりか、もうほとんど塞がってきていたのだ。
「どういうことだ?」
俺は目の前で起こった事実に、驚きの声をあげた。
それから一番ひどい左肩から背中にかけての傷を、何とか手で触れて確認すると、ほとんど塞がっていることがわかった。
「この薬草のおかげか?」
そう俺は立ち上がる時や背中の傷に触れて確認したさいに地面に落ちたすり潰したような噛み潰したような草を見つめていると、グギュルルルルと唐突に俺の腹の音が鳴った。
「そういえば、腹が減ってたんだ」
俺は自分が死ぬほどに腹が減っていることを思い出した。
そして、自分が腹が減っていることを思い出したあとの俺の行動は決まっていた。
「よしっなにはともあれっまずは腹ごしらえだっ!」
俺はすぐそばに落ちていたハルバードを手にすると、オーク肉の味を思い出しながら、ブヒブヒとブタに似たブタ鼻をひくつかせると、すぐさまオーク肉を手に入れるために、上半身裸のまま倒したオーク肉の匂いを辿ることにした。
そうして俺がブタ鼻を使いオークの肉の匂いを辿って、オーク肉にたどり着くと、灰色狼の群れが群がり当たり前のようにオークの肉を貪っていた。
「お前らっ誰がその豚を命がけで仕留めたと思っていやがるっ!」
楽しみにしていた獲物を横取りされたために、怪我をしていることが頭の中から完全に抜け落ちていた俺は、手にしたハルバードをぶん回して、瞬く間に灰色狼の群れを壊滅した。
それから灰色狼の群れが食い散らかしたオークの残骸は……食べられそうにないので、放置に決めると、残ったオーク肉を回収しに向かったのだが……。
残したオークの残骸は、一匹残らず灰色狼に群がられていて、回収できたのは、オークどもが使っていた斧鉈剣に、折れた槍とオークどもが身に付けていた鎧や兜、最初に手に入れたハルバードに、オーク回収作業中に駆逐した不味いスジ肉しかない大量の灰色狼だった。
その数ざっと五十体だ。
「はあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ」
俺は盛大なため息を吐き出しながら、今度から倒したうまいお肉は、灰色狼たちに横取りされないようにその場で回収しようと固く心に誓うと、仕方なく今回は大量の灰色狼たちを木に絡まっている蔦を使ってひとまとめにして肩に担ぐと共に、空いている方の肩に担いで、オークたちが身に着けていた使えそうな武具を持ち帰ることにした。
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