第十七話 ブタっぽい俺の灰色狼祭りと人探し
今日俺はオーク狩りに行ったはずなのに、なぜか大量の灰色狼を串刺しにして、いつものように、ヒステリア森林の帰り道に拾い集めた小枝で起こした焚き火の回りに突き刺して、川魚のようにして焼いていた。
「はああああぁぁぁぁぁ。また灰色狼かよ……こいつら今朝食ったばっかなのになぁ……」
俺は無意識に出るため息をつき文句をいいながらも、森で得た戦利品(サイズが合わずに身に着けられなかった)を椅子代わりにして、ひたすら灰色狼たちが、焼き上がるのを待っていた。
「ほんとはあのうんまいオーク肉が食えるはずだったのに……こいつらのせいで、またスジ肉かぁ。スジ肉かてえんだよなぁ。うまくねえんだよなぁ。はああああぁぁぁぁぁ」
俺は文句を言いながらも、何とか焼き上がった灰色狼たちを、次々に焼き鳥のように丸かじりしながら平らげていく。
「やっぱかてえなぁあ。まじいなあぁぁぁ……。俺のオーク肉……」
俺は食い物の恨みを込めて灰色狼を焼いては食い。食っては焼いて次から次へと食っていくと、無意識のうちにいつの間にか灰色狼のすべての串焼きを胃袋に収めてしまっていた。
「ああもうないのかよっ! ぜんっぜんっ足・り・ね・えっ!」
とはいっても、辺りはもう真っ暗だ。仕方なしに俺は就寝することにしようとしたんだが、灰色狼を食べて空いていた腹が少しは満たされたために、少しばかり頭に血が通ったのか、空腹で忘れていたあることを思い出していた。
「あっそういやあのオークに襲われてた女の子は、あのあとどうなったんだっけ?」
俺は女の子と別れた時の状況を思い浮かべる。
確かハルバートオークに不意をつかれた俺が奴の攻撃をとっさに槍で受け止めたんだよな。
けど、何度目かのハルバートの降り下ろしに耐えきれず槍が真っ二つに折れちまったんだ。
で、ハルバートオークに止めを刺されそうになった俺からオークの注意を引こうと、女の子がオークに噛みついたんだけど、オークからしたら年端もいかない女の子の噛みつきなんか大したことなかったみたいで、女の子に向かって嫌らしい下卑た笑みを浮かべてたんだ。
その笑みを見て、俺がこのままオークにやられたら、女の子がオークの苗床にされると思って、ダメ元で肉団子車(前転)してから、渾身の力を込めて折られた槍をオークの鎧の隙間から突き刺してやったんだ。
それから俺に腹を突き刺されたオークが俺の上にのし掛かるように倒れてきたから、俺は何とか残った力でオークの下から這い出て、最後の最後の力でオークの頭を岩で潰してから気絶したんだった。
まぁ俺が気を失っててもこうして生きてるってことは、あの場にいたオークはあの時の俺の捨て身の一撃で倒せたんだろうし、オークさえいなきゃたとえ子供でも自分から進んでこんな森の中に入って来たんだし、帰り道くらいわかんだろ?
ただ問題なのはあの女の子が自分の意思でなくこの森に来ていた場合だ。
その場合一人では、住み処まで帰れないかもしれない。けど俺が気がついたあの場所にいなかったってことは、後者はないと思う。
見ず知らずの森の中なら、いくら俺がオークに似ていると言っても、道もわからない危険な森の中で、女の子が俺のそばを離れるとは思えないからだ。
だからきっとあの女の子は、自分から何らかの理由で森に分け入ってきた前者で、気を失った俺を置いて村なり何なりに帰ったんだろう。
あんな状況だったんだ。薄情かもしれないけど仕方ないよな。気絶した俺を見て死んだと思ったのかもしれないし、きっとうまく自分の村なりなんなりに帰ったんだ。
きっとそうだ。
俺はそう思うことにした。
……んだけど、
でも、もし、まだ森の中に居たとしたら?
暗い森の中に年端も行かぬ女の子一人でさまよっていたとしたら?
女の子のいる森には、オークや灰色狼がいる。
いや、俺が目にしてないだけで、もっと危険なモンスターがいるかもしれない。
でも今から行ってもいるとは限らないし、それにもうあれから大分経つ。
それに日が暮れる夜の森は危険がいっぱいだ。
「ああもうっしかたねぇなぁ!」
俺は乱暴に頭をかきむしりながら決断を下した。
いなきゃいないで、無事に森からでた。
いたらいたで親元なり何なりの元に連れて行って引き渡す。
俺はそう決断を下すことにして、頭をかきむしると、立ち上がりリュックを背負う。すると、リュックの中身がぶちまけられた。
ああそういえばリュックは背後からオークに切り裂かれたんだった。
俺はオークに切り裂かれてもうリュックの役割を果たせなくなったリュックを悲しげに地面に置くと、灰色狼たちを焼いていた焚き火の火のついた松明を一本手にして、蔦やビニール袋をひも代わりにしてハルバートに括り付けると、寝るのをやめて女の子を探しに薄暗くなり始めた森へと分け入っていった。
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