第十二話 ブタっぽい俺の二度目のオーク狩り① 武装オーク
空だったはずのポテチ袋から新たに発掘したポテチたちを食いつくした俺は、後ろ髪を引かれながらも、先ほど仕留めて、焚き火の回りに串刺しにして焼いていた灰色狼がいい匂いを放ちだしたので、ふと我に返った。
「そういや灰色狼焼いてたんだっけ」
再び出会えたポテチを失った俺は、意気消沈しながらも、朝飯がまだだったことを思い出して、焚き火の前に座りあぐらをかくと、灰色狼の串焼き(丸焼き)を手に取り、かぶりついた。
「う~ん。微妙……やっぱサングラスの鑑定通り筋張っててあんまうまくないな。やっぱ肉といえばオークだよなあ」
俺は昨日まるごと六体食べたオークの味を思い出していた。
「うしっまずなにはなくともオークだろ!」
オークの肉の味を思い出した俺は、串焼きにした灰色狼をすぐさま完食して立ち上がり足でたき火の火を消すと、狩りの準備に取りかかった。
もちろん狙いはオーク肉だ。
俺はすぐさまオーク狩りの準備を整える。
まぁ準備と言っても、お手製のモーニングスター(多重ビニール袋の中に手頃な大きさの岩をつめただけ)を手にもち、もう片方の手にオークを串刺しにして焼いていた木の棒を持ち、リュックを背負うだけだが。
そうしてオーク狩りの準備が整った俺は、サングラス(サンバイザー)を装着すると、オークを求め、ヒステリア森林に分け行って行った。
オークを求めてヒステリア森林に分け行った俺は、トリュフ探しをするブタのように、鼻をブヒブヒと蠢かせていた。
理由はもちろんあのうまい極上のブタ肉のようなオークの香りを辿るためだ。
そうして、ヒステリア森林に分け行ってからしばらくして、俺はオークの匂いを嗅ぎとっていた。
「こっちか?」
ブタのような鼻で、オークの匂いを感じとった俺は、オーク肉にありつくために、オークの匂いを辿り始めた。
オークの匂いを辿り始めてから、すでに三十分ほどの時間が経過しただろうか? ようやくと行った感じに俺は、オークの姿が見える位置へと辿り着いていた。
オークの姿が見える位置に辿り着いた俺は、すぐさま草葉の陰へと身を隠した。
なぜなら、俺の目の前約十メートルほど先には、高さ約二メートル幅およそ三メートルほどの洞窟があり、さらにその洞窟の前には、今まで倒したオークよりも体もでかく。屈強な肉体をしたオークが二体。まるで洞窟を守る兵士のように、冒険者からはぎとったような革製のボロボロの鎧を身につけて、手には刃先の丸くなり錆の浮いた槍を握って立っていたからだ。
「武装したオークが二体か……丸腰ならともかくあの槍と、鎧は厄介だな」
朝方少量とはいえ、ポテチを食い。さらに灰色狼を口にしていたために、多少空腹といっても、理性を失うほどでなかった俺は、珍しく冷静に物事を見て様子をうかがっていた。
オークのお肉は欲しいが、あの装備にまともに突っ込んだら、へたをしたら返り討ちにあうのがおちだ。
ここは確実にオーク肉を手にいれるためにも、単独。もしくは、武装していないオークを狙うべきだな。と頭の中で冷静に考えを巡らせた俺は、安全確実にオーク肉を得るために、他の場所で比較的狩りやすそうな無防備なオークを探すことにした。
武装した二体のオークが守るオークの集落と思わしき洞窟から引き上げた俺は、無防備な非武装オークを探していた。
「いねぇなぁやっぱあの槍持ちやんなきゃだめか?」
そう思いながら、さらに無防備オークたちを探し回っていると、遠くの方から人の悲鳴のような叫び声が聞こえてくるのに気がついた。
「ん、人の悲鳴か? まぁ今の俺には関係ないか」
オークを探すことに夢中になっている俺は、人の悲鳴を無視することにした。
別段もといた世界でも、人より少しばかりポチャポチャしている俺は、普段から赤の他人からは、冷たい目で見られ、時に人の心を無視した暴言を吐かれていたからだ。
それに少々世界が変わったからと言って、世界の人たちの俺を見る目が早々変わるとは思えないからだ。そんな奴らを命がけで助けてやるほど俺は、お人好しではない。
そしてなにより、腹を減らして理性が欠如している時ならまだしも、シラフな状態で赤の他人が襲われているのを助けてやれるほど俺の心は強くないからだ。
こんなオークのようなガタイをしていても、俺は基本小心者なのだ。
俺が自分の中で、人の悲鳴を聞きながらも助けにいかない理由付けをしていると、先ほど聞こえた悲鳴はさらに悲壮感を増していった。
悲壮感を増した悲鳴を耳にした俺は、様子だけを見るために、足を悲鳴の聞こえる方へと向けたのだった。
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