信じるか信じないかは

カゲトモ

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「っくしっくしっくしっ」

 くしゃみを噛み殺したつもりが、上手く殺すことが出来なかった。いくら裏へ下がったと言ってもあまり大きな声でくしゃみをするわけにはいかない。

 ちなみに俺はアレルギー持ちではない。

「風邪とか、引いていませんか?」

 くしゃみを聞いてか、斉藤君が下がり眉で訊いてきた。優しい子だなぁ。

「大丈夫、大丈夫」

 身体も熱くないし、気分も悪くない。それにもう服も乾いたし。

「災難でしたね。水をぶっかけられるなんて」

「なー」

 先ほど俺は「この最低男!」と罵られた男性客に浴びせられた水の流れ弾を受けて顔面を水浸しにしていたのだ。

「僕、あんなの本当にあるんだってびっくりしましたよ。ドラマみたいでした」

「俺も初めてだよ、あんなの」

 本当にドラマみたいに見事にグラスの水をぶっかけていた。その大半が俺に降りかかった訳だけど。

 まぁ、確かに長いバーテン人生であんな光景を見たのは初めてだとしても、俺がこんなに驚いているのは何もそれだけではない。

「占いって当たるもんなんだね」

「そうですねぇ・・・」

 俺は今日、水難の相が出ているらしい。

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