宿泊客は冒険者!? ~僕のホテルのお客様は地下迷宮からやって来ます~

神田 るふ

第1話 フロントのモノローグ

 想像してほしい。

 あなたは、とある普通の、いや、ちょっと寂れた……訂正、かなりくたびれたホテルの受付係。

 国道からも駅からも遠く、近くに観光地もなく、昔は湧いていた温泉も既に枯れ……。

 時節は真冬の一月末、外は大雪冬景色。

 こんな状況の下で、あなたはフロントに座ってお客を待っている。

 きっと、あなたの視線はホテルの入口ドアに注がれるだろう。

 何時、ガラスドアの向こうにお客様の陰が映るだろうか、と。


 だが、お客様がドアからしか来ないとは、限らない。

 

 想像してもらいたい。

 あなたの座っているフロントの正面にある、エレベーター。

 地下一階のランプ、B1の表示が付いている、そのエレベーターだ。

 今、ランプが点滅したのに気が付いただろうか。

 しっかり、七回点滅したことがおわかりいただけただろうか。

 “お客様”が来るシグナルだ。

 ランプがB1から1Fに変わった。

 もうじき、お客様が上がってくる……。


 無理かもしれないが、想像していただきたい。

 

 このホテルのお客様は、地下からやってくる。

 こことは違う、別の世界から。

 

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