49
佐治さんがそう言った直後、男の目からあらゆる感情が消える。
「家族をトカゲに殺されて、敵を討つどころか敵にもならないって見逃された。その現実を受け入れられずに、自分でも殺せるトカゲを血眼で探して八つ当たりで殺して回る。アンタいい加減鏡を見なさいよ――直視できないレベルでみっともないわ」
男は、虎のように躍って――咆哮した。
「お前だって同じだろうがっっっっっっっっ!!!!!!!!」
男の拳が佐治さんの肩に当たった――ように見えた。あまりにも速すぎたためにはっきりとは見えなかった。二度、三度と佐治さんは殴られたようで、細長い体が得体の知れない玩具のようにぐにゃぐにゃと曲がった。
「お前だって! お前だって! ――お前だって、あれに勝てなかったくせに!! 自分の方が現実がわかっているとでも言いたいのか!? 自分の方が立派で、私の方がみっともないとでも言いたいのか!? 私とお前に一体なんの違いがある!? 両方ともトカゲに最も大事なものを踏み躙られた、ただの負け犬だろうがっっっっっっ!!!!!!!」
歪なほどに目を見開き、両腕を振り回して絶叫するその姿は、呪いを撒き散らして狂う悪魔そのものだった。
そんな男の姿を、佐治さんは最早見慣れてしまった、呆れているような、諦めてしまったような顔で見つめていた――佐治さんの右足が消える。直後、荒れ狂っていた男が膝から崩れ落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます