15
(あれは……トカゲ、なのか?)
外見におかしなところはない。周囲の人間にもちゃんと見えているようだ。だが、そう判断する理性とは無関係に、僕の全身が叫んでいる――あの女はトカゲだ、と。
「……楓、どうかしたの?」
梓の声で我に返る。急いでここから逃げるべきだ。もし、あの女に目をつけられでもしたら、
「梓、そろそろ出よう」
「え……でも楓のミルクレープまだ残って」
「いいんだ」
立ち上がり、梓の手を引いてレジに向かう。会計を済ませている間、一瞬だけトカゲと思しき女の方を見る。
――女は僕の方を見ていた。視線が合う。女の目が見開かれる。
「行こう」
会計が終わると同時に、梓の手を強く引き、店から出る。できればタクシーにでも乗りたかったが見える範囲には走っていない。ならば近くの駅に――
「……で……楓! 離して!」
手が振りほどかれる。後ろを振り返ると、涙目になっている梓の姿が見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます