第2新聞部活動Diary
KACLA −カクラ−
1.部活動勧誘記録
入学式も終わり、これから始まる学校生活に思いを馳せながら、
校舎前のロータリーでは、新入生への割礼なのか、はたまた嫌がらせなのつもりなのか、先輩とみられる生徒による部活動への勧誘が行われていた。僕は横目でそこを通り過ぎる。
中学校とは自由度が格段に違うのだろう。入学生の目を釘付けにしてしまうような、素晴らしいパフォーマンスを見せる部活が列挙している。
しかし、中にはもちろん例外もあるわけで、変な意味で新入生の目を釘付けにしてしまうような、大変不名誉な部活もある。
そう。例えば今、僕の目の前にいるあの人とか。
あろうことか、曇り空の下を上半身裸で「君も一緒にマッスルしようぜ」とわけの分からないことを口走ってしまっている。
彼はきっと、4月という時期柄のせいか頭の体調を崩してしまったのだろう。
そもそも、あれは部活なのだろうか?だとしたら、筋トレ同好会という名がふさわしそうだ。
しかし、あの姿だ。寒くはないのだろうか? 確か今日の最高気温は15度程だったはずだ。それにしても、周りからの目がより一層温度を下げていそうなものだが。
そんな下らない分析をしていたせいか、いつの間にか、さっきの筋肉がこちらの目を覗き込んできていた。
「やあ、新入生君。オレっち達の部活の勧誘を受けてみないかい?」
このクソ寒い日に、海パン一丁で勧誘するその姿に本気度を感じるが、ほかの生徒から僕まで変な目で見られてしまわないか心配になってくる。割と人目は気になるものなのだ。けれど、話し方といい、本当受け付けないなぁ・・・。
そんなことを考えていたら、彼の顔が、ゆっくりと近づいてくる・・・。キスされちゃうのだろうか? まあ、僕は男としてとても魅力的な顔をしていることに自負してはいるが。まさか、同性にもその魅力を与えてしまうなんて。
そろそろ限界だ。暖かい恰好をしているのに、鳥肌と悪寒がするのだ。ごめんなさい。僕、ムサいの苦手です。もちろん、口にはださない。態度だけだ!
「オレっち達は、第1新聞部だ。今月の新聞は、新入生クンが楽しく読めると思うぞ」
そういって、学内新聞程の大きさの紙を手渡してくる。なんだか、端っこがぬれているが、こいつの体液かなにかだったら、受け取るのはご遠慮させていただきたいものだ。
とりあえず、見出しくらいは読んでみることにする。でかでかと目に入ってきたのは、
『スクープ! 呪われた学校、柵学園高校の戦前の闇』
である。入学早々行く気失せるタイトルだよね!? 僕、このままだと社会のはやりに乗って不登校とかになっちゃうよ!?
「これって、どういう・・・?」
「そのままの意味だ。とりあえず読んでみるといい」
僕の反応に喜んでいるのか、心なしかさっきまでよりも声が弾んでいるように感じる。
そんな時だ。天使が現れたのだ。いや、気持ち悪さによるショック死寸前だったから見えたとかじゃないよ!?
「ねえ、そろそろ解放してあげたら? 彼、嫌がっているように見えるのだけれど」
それは、凛々しさのある透き通った声。それでいて、背は普通くらで黒髪ロング。さらに、いろんな部分まで控えめな体型。顔のパーツも整っていて・・・、まるで物語の世界から出てきたような美少女が立っていた!
ヒロインの登場としては最適なタイミングである。これはワンチャンあるかもしれない。
「ほら君、肉だるまから離れなさい。あと、こんな汚い紙捨てちゃいなさい」
そういって、僕の手から先ほどもらったばかりの新聞をひょいっと取り、地面に捨てた。この人、めっちゃ可愛い顔してやることえげつないな・・・・。
今の彼女の行動で彼女の好感度ポイントが30ポイントさがった。
「あ、風で飛ばないようにしないといけないわね」
と、先ほど彼女が地面に捨てた肉だるまの新聞を、今度はスニーカーの底でぐりぐりと踏んだ。なにこれ、こわ。
あっけにとられた肉だるまは、口を死にかけの金魚のように、パクパクと
させている。
「君、逃げるわよ」
そして、彼女は肉だるまへの挑発を多分にしたと思ったら、今度は僕の手をもち、向かいの校舎まで手をつなぐ形で引っ張っていってくれる。
これって、明日絡まれたりしないのだろうか? なんて、不安になったりするが、今はそれどころではない。
なぜなら、こういうのってラノベでよくあるアレっぽいからである。あれ、つまり僕ってラノベの主人公に昇格? きたこれ!!
それでは、主人公っぽく何か決めゼリフを・・・。
「刻よとまれ!」
先輩がこちらを、怪訝な目で見つめる。あ、やらかした。 なにか・・・。なにか、この状況を打破する方法はないのだろうか・・・? あ、そうだ。さっきの新聞。あれってどういう意味なのだろうか?呪われた学校って・・・。
けれど、これ今言うタイミングじゃないよね・・・。えっと・・・。
そのまま空気が止まったことは言うまでもない。
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