摂理と背理に振り回されて



摂理と背理に振り回されて

言い訳じみたエトセトラ

新緑に逆らうわけじゃないけど

密やかな息をしたくなる


原理と物理に従わされて

笑って言えないケセラセラ

さんざめく初夏の雑踏の中で

行き場をなくして漂いたい


きみに届け損なった言葉がある

初夏に惑う街の中で

それをずっと探しているのだけれど

いつも間に合わないまま

季節が変わる


駅前のロータリーに佇む

幾十もの案山子の肩で

鳩が羽を休めている

陽光は日増しに強くなり

そのうちに案山子にも暇が出される

淡い夏が上塗りされる前に

このスナップの中にいるはずの

きみと手を繋ぎたくて

宛てはないのに

僕は僕の矮小さを忘れて

命を少し街に溶かす


摂理と背理に振り回されて

言い訳じみたエトセトラ

祈りにも似た駆け引きで

日陰に身を寄せる


原理と物理に従わされて

笑って言えないケセラセラ

木の葉がさえずる神社に行って

ふたり分のおみくじを引く


愛とは呼ばない

恋とは言えない

仲間であるとは言えるけれど

友とは少し違う

罪を共に抱えながら

お互いの燭台からたゆたう光が

すこし触れあっただけ

もう光は見えない

それでいいと今は思う


青空に向かって

言葉にならない光を

今年も間に合いそうにない

謝罪を


初夏に逆らって

密やかな息をして

やり過ごしているうちに

きみは僕から離れていく

シンプルな理がそこにある

それでいいと今は思う

案山子に背中を預けて

世話ないよなあと呟くよ

祈りをどこかで見つけても

世話ないよなあと呟くよ


きみに届け損なった言葉がある

初夏に惑う街の中で

それをずっと探して

命を少し街に溶かす




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