真実は小説よりも

カゲトモ

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 ガシャンッ!

 耳障りな音が店内に響いた。「失礼しました」と頭を下げてから床に散らばったガラスの破片を片付ける。

「あちゃー」

 ガラス片も大変だが、正直俺の足の方が大変だった。制服のスラックス、その裾の部分がびちゃびちゃに濡れてしまっている。先ほど落としたグラスにたっぷりとミネラルウォーターが注ぎ込まれていたからだ。落とした拍子にそれがそのまま足に掛かってしまった。

「マスター大丈夫ですか?」

 破片を片付ける為に斉藤君がチリトリとホウキを持って来てくれた。その顔は心配顔の困り眉。

「二回目ですけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫」

 薄い笑いを張り付けた顔で手を振った。とりあえず履き替えないといけない。「ごめん」とだけ残して裏へと下がった。

 一度目は開店前の時だった。洗い物をしていたら水の出が悪くなって、指先で蛇口の先に触れた瞬間スプラッシュ。水しぶきが全身に飛んだ。もう、バッッと飛んで濡れた。その時はタオルで拭いただけで間に合ったが、今回はそうはいかない。べったりと張り付くらい濡れているのだから。

 カウンターから出ないと言ってもさすがにこれではまずい。裏に掛けてあった予備のスラックスへと穿き替えた。

「うぁ」

 靴下まで濡れている。救いは靴の中までは濡れなかったことだろうか。靴下も予備(と言う名の購入して持って帰っていなかっただけのやつ)のものに履き替えた。

「水難の相か」

 ばっちりと当たってやがる。あの占い師め、やはり本物だったのか。

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