グダグダ斜女神(⋈◍>◡<◍)。✧♡

渋谷かな

第1話 愛神望

トアル異世界。

「剣が最強だ!」

「魔法が最強だ!」

剣が1番強いと思っているアホな剣士と、魔法が1番強いと思っているバカな魔法使いがいました。

「物理攻撃が最強だ!」

「間接攻撃が最強だ!」

剣士は勇者や戦士から支持を得て、魔法使いは弓使いや狙撃手の指示を得て、世界を2分する第3次異世界対戦が開戦された。人類は地球を滅ぼす愚かな行いに怯えた。

「やめなさい! おまえたちに愛はないのか!? おまえたちは美しくない! 美しくない者には死あるのみ!」

その時、1人の女神が神々しい光を放ちながら地上に舞い降り、第3次トアル異世界対戦を終わらせ、世界を平和に導いたという伝説があった。



「私は世界を平和にしたい。」

この物語は、その女神の化身の話である・・・はず。



トアル異世界。

「アプロディーテー様はどこに遊びに行かれたんだ!? 仕事がたくさん残っているのに!? 化身の私に押し付けて!? 見つけたら怒鳴りまくってやる!」

愛と美の女神アプロディーテーは、あとはよろしくと書置きを残し、膨大な書類を化身に任せて敵前逃亡して姿を消してしまった。

「まったく化身の身にもなってほしいものです。はあ・・・。」

化身の名前はヴィーナス。色白金髪のほぼ裸で羽衣を1枚羽織った可愛い化身であった。いつも主のアプロディーテーに困っている。

「なんだ? この気配は?」

1人の女神の化身が愛と美の女神アプロディーテーを探して裏原宿の路地を歩いているとストリートの壁に変な気配を感じた。

「え? うわあ!?」

化身は壁に手を伸ばしてみたら手が壁の中に消えていった。そしてバランスを崩し体ごと壁の中に吸い込まれてしまった。



現実世界の裏原宿。

「ここはどこでしょう? とある異世界ではなく、現実世界に来てしまったような・・・。」

ヴィーナスは目を覚ましたが、まったく知らない路地裏に来てしまっていた。

「うわあ!?」

ヴィーナスがいきなり現れたので、目の前で男の子が腰を抜かして地面に倒れて驚いていた。

「大丈夫ですか?」

ヴィーナスは女神の化身として、優しく微笑んで人間に声をかけた。

「痴女!?」

男の子はヴィーナスを振るえる手で指さし恐る恐る声を発した。ヴィーナスはほぼ裸の美女で羽衣を1枚羽織った姿なので現実世界では露出狂であった。

「だ、誰が痴女だ!? 私は愛と美の女神アプロディーテー様の化身! ヴィーナスであるぞ!」

ヴィーナスは愛と美の女神アプロディーテーの化身の自分を痴女扱いされ怒った。

「ヒイイイ!? ごめんなさい! ごめんなさい! 許してください!」

よっぽどヴィーナスが恐ろしかったのか、男の子は低姿勢で謝りまくった。

「私の偉大さが分かれば、それでよろしい。」

ヴィーナスは謝ってもらい機嫌が良くなった。

「ホッ~。」

男の子は痴女が怒っていなそうなので安心した。

「ここはどこですか?」

ヴィーナスは現在地が知りたかった。

「ここは裏原宿ですが?」

男の子は聞かれたことを素直に答えた。

「ええ!? 現実世界にも裏原宿があるんですか!?」

裏という地名はとある異世界の呼び名だとヴィーナスは思っていたので、

現実世界に裏という地名があることに驚いた。

「知らなかった・・・現実世界に裏という地名があるなんて・・・ああ!? まさかアプロディーテー様が時々姿を消されるのは、この秘密の通路を使って次元を超えて現実世界に遊びに行っていたのでは!?」

ヴィーナスはある仮説を立てて腕組みをして悩んでいた。こうして裏原宿は現実世界と、とある異世界をつなぐ出入り口であった。

「な?」

ヴィーナスが悩んでいると男の子は上着を脱いでヴィーナスの肩にかけた。ヴィーナスは少しドキっとした。

「さ、さようなら!」

男の子は、そう言うと慌てた様子で走って逃げ去った。

「お、おい!」

ヴィーナスは手を伸ばして呼び止めるが男の子は振り向かずに走り去っていた。

「意外と・・・いい奴だな。」

とある異世界で生きてきたヴィーナスは初めて人間の優しさに触れた。

「あ! この服を返さなくっちゃ! イヒ!」

愛の女神の化身の血が騒いだヴィーナスは人間の男の子に興味を持った。これを人間は恋だの一目惚れだのいうのだが、まだ女神の化身の彼女は自身の恋心には気づいていない。



ヴィーナスは男の子を尾行して、男の子の自宅にまでたどり着いた。

「時神? 私と似た様な名前ね。」

男の子の家の表札には時神と書いてあった。

「ピーンポーン・・・返事がない。勝手にお邪魔しますよ。」

ヴィーナスは鍵のかかった玄関の扉をすり抜け、勝手に家の中に入っていった。

「あいつの部屋はどこだ?」

ヴィーナスは1階から男の子を探すが見つからない。

「2階かな?」

ヴィーナスは階段を登り2階に着く。

「おお! あいつの気配だ! ・・・なんだ!? この邪悪な気配は!? 少し中の様子を覗いて見るか。」

男の子の部屋の前に立つヴィーナス。しかし部屋の中から邪悪オーラが発せられている。

「えい!」

ヴィーナスは部屋の中を透視した。

「うわあ!? カーテンを閉め切って真っ暗だ!? なんだ!? 壁にはアニメの萌え萌えポスター!? んん!? 今時スマホーやネットゲーじゃなくて、テレビゲームだと!?」

そう、男の子は完全なオタクの引きこもりであった。

「さり気なく私に上着をかけてくれたカッコイイ男の子だと思っていたのに、まさか引きこもりオタク野郎だったとは・・・。」

吐き気を伴いショックを受けるヴィーナス。

「いや! 私は彼に借りがある! 愛と美の女神アプロディーテー様の化身として、引きこもりのオタクを立ち直らせるのも、私の使命! 上着をかけてもらった恩を返すために、私が引きこもりオタクから卒業させてあげまよう!」

ヴィーナスは諦めなかった。男の子に上着をかけてもらっただけだが、ヴィーナスの目には見えない感情が女神の化身としての使命感を増幅させる。

「まず2次元オタクから卒業してもらいましょう。どんな男でも私と付き合えば、アニメの女より生身の女の方が良いと気づくはず! なんと言っても私は愛と美の女神の化身ですからね! イヒヒ!」

不敵に笑うヴィーナスは自分に自信満々だった。

「でも、いきなり私のような綺麗な女神と付き合うと心臓麻痺で死んでしまうかもしれない・・・最初は男の姿で近づいて様子を見てみますか。男にな~れ!」

ヴィーナスは半裸上着女から、ちゃんと服を着た色白金髪リーゼントの男の子に変身した。

「次に私のいる日常が普通であるように記憶を塗り替えます! そ~れ!」

ヴィーナスは男の子と周辺の人間の記憶に自分が前からいるように記憶を塗り替えた。

「女神の化身って、なんて優秀なんだろう! イヒ!」

ヴィーナスは自分の仕事ぶりに自画自賛するのだった。

「カーテンを開ける! ああ~なんて気持ちのいい陽射しだ! 壁の萌え萌えポスターを水着のグラビアアイドルにチェンジ! これでオタクと決別だ! テレビゲームには愛の一撃で破壊! スマホとネットゲーをプレゼント!」

いきなりヴィーナスは男の姿で男の子の閉め切った部屋に侵入。まずカーテンを開けると暗い部屋に聖なる光が差し込み、窓も開けると心地よい風が部屋の不浄を吹き飛ばす。次に壁のアニメの可愛い女性の萌え萌えポスターを破り剥ぎ取り、現実の女性の巨乳アイドルの水着ポスターに張り替える。最後に男の子が遊んでいたテレビゲームを愛と美の女神の化身らしく愛のこもった拳で砕き修理不能に粉々に破壊し、お詫びにスマホとパソコンを手品のようにパッと出して、何事もなかったかのように男の子に渡す。

「な、なんだ!? おまえは!?」

男の子はいきなり知らない男が入って来て、好き勝手に模様替えをするので怒り驚いている。

「愛神望。」

窓から入る陽射しを背に神々しく輝きを放ちながら自己紹介をする姿は男の姿でも美しかった。

「愛神望!? そんな奴は知らない!? 出て行ってくれ! 警察を呼ぶぞ!」

男の子は突然の不法侵入の愛神望にキレキレだった。

「あれ? おかしいな。記憶を操作したはずなんだけどな?」

愛神望は自分を邪険に扱う男の子を不思議に思った。

「ただいま。あら! 望ちゃん、着いたのね。」

都合よく男の子の母親が帰って来て、愛神望を笑顔で迎え入れる。

「ご無沙汰しています。おばさん。」

愛神望の記憶操作は男の子の母親には効いているようだった。

「お母さん!? こいつ誰だよ!? 知っているの!?」

男の子は母親に愛神望のことを尋ねる。

「巧、何を言っているの。親戚の望くんじゃない。あなたも小さい頃よく遊んだでしょう。」

愛神望は男の子の親戚ということになった。

「記憶にないな・・・。」

男の子の記憶に子供の頃に愛神望と遊んだ記憶が無いのは当然であった。

「シングルマザーのおばさんが行方不明になってしまって大変みたいなので、しばらくの間、うちで望くんを預かることにしたから。部屋が無いから、巧の部屋に一緒に過ごしてもらうからね。」

愛神望は男の子の家に居候し同じ部屋で生活することになった。

「ええ!? 無理無理無理!? そんな話は聞いてないよ!?」

男の子は断固拒絶した。

「よろしく。巧くん。」

愛神望は優しく笑顔で微笑んだ。

「・・・。」

男の子の名前は、時神巧。不幸にも愛と美の女神アプロディーテーの化身であるヴィーナスに裏原宿で出会ってしまい、さり気なく上着をかけてしまったことで、彼の人生は大きく変わろうとしていた。



食卓で愛神望は夕ご飯を時神巧と巧の両親と一緒に仲良く食べた。

「お母さんのハンバーグはおいしいですね。」

「そう!? 望くんは嬉しいことを言ってくれるわね!」

「本当のことを言っただけですよ。」

「ハハハハハ!」

食卓には巧以外の家族の笑い声が響いた。

「・・・。」

巧は黙々とご飯を食べている。

「巧くん、一緒にお風呂に入らない?」

望は気さくに巧に声をかけてお風呂に誘う。

「入らない。」

巧は望のことが気に入らなかった。

「そう言わないで、これから一緒に暮らすんだから。」

望はしつこく巧を誘う。

「ごちそうさま。」

そう言うと巧は部屋に1人で帰って行ってしまった。

「なんだ?」

望は巧の素っ気ない態度に違和感を覚えた。

「はあ・・・。」

巧の母親が暗い顔でため息を吐いた。

「おばさん、大丈夫ですか?」

望は巧の母親を心配する。

「みっともない話なんだが、巧は引きこもりのアニメオタクなんだ。いじめられているのか、学校も行ったり行かなかったり不登校気味なんだ。」

巧の父親が巧の現状を語る。

「このままでは巧が学校も卒業できないで、就職もできなくて、引きこもりニートになってしまうのが心配なの。」

巧の母親の未来予想通り、このままでは巧は無職、甲斐性なしの貧乏人になってしまう。

「私に任せてください! 巧くんを生身の女性に興味がある普通の男の子にしてみせます!」

望は愛と美の女神の化身の使命として、巧を真人間にすることを誓うのだった。

「そう言ってくれると助かるわ! ありがとう! 望くん!」

「いや~! 望くんにうちに来てもらって本当に良かった!」

巧の両親は望の申し出を快く受け入れた。

「巧に愛と美の女神の化身の力を見せつけてやる! イヒ!」

望は巧に興味津々であった。



食事を終えた巧は早々にお風呂で湯船に浸かっている。

「なんなんだ!? アイツは!?」

巧は望に反発心を抱いていた。

「僕は暗い部屋が好きなのに、勝手にカーテンを開けるし。僕の大好きな萌え萌え萌子ちゃんポスターを破り捨てて、乳を出したおばさんのポスターに張り替えるし。もうちょっとで完全クリアだったテレビゲームの本体を殴って破壊して、スマホとネットゲーをやれ!? 僕の部屋なんだぞ!? 僕の・・・唯一の世界なんだぞ。望は、いったい何様のつもりだよ!?」

巧は完全に不貞腐れていた。

「巧くん!」

風呂の扉が開き、笑顔の望が裸でお風呂に入って来た。

「ゲホッ!?」

驚いた巧はバランスを崩し、思わずお風呂の水を飲んでしまった。

「一緒に入ろう! 仲良くなるには裸の付き合いが1番だ!」

望は裸でも堂々としたものだった。

「誰が一緒に入るか!? 僕は出る!」

そう言うと怒って巧は風呂から去って行った。

「逃がさないよ。巧くん。イヒ!」

1人になった望は不敵に笑いながら湯船に浸かりながらも、確実に巧をロックオンしていた。



お風呂からあがった望は寝るために巧の部屋に行く。

「うわ!? 真っ暗!?」

巧の部屋は電気が消され、月明りだけで真っ暗になっていた。

「巧くん、もう寝たの?」

「zzz。」

巧はベットで壁の方を見た向きで横になって寝たふりをしていた。

「それじゃあ、私も寝るか。」

そう言うと望は静かに巧の寝ているベッドに忍び込んだ。



真夜中、巧は望が気になって眠れなかった。

「・・・。」

巧はやかましい望が静かなのが不気味だった。

(・・・静かだな。寝たのかな。)

巧は気になってベッドの中で寝返りを打ったフリをして望の方を見た。

(ギョ!?)

ベットに色白金髪の美女が眠っていた。

(な、な、な!?)

恋愛経験など無い巧はパニックに陥った。

(はあ!? 望か!?)

こいつは望だと巧は気づいた。

(なんと紛らわしい・・・。)

金髪リーゼントの長い髪の毛を下ろすと可愛い女の子らしい髪形になっていた。

(ドキン! ドキン!)

なぜか眠っている望を見ている巧の胸はときめいていた。

(な、なぜドキドキするんだ!? こいつは男だぞ!?)

巧は胸がときめいて眠れない。

「う・・・ううん・・・。」

望は寝相が悪かった。

(ギャ!? ギャア!?)

望は巧に腕を絡ませてくる。

「ブチュ!?」

そのまま望は巧にキスをした。

「ん!?」

巧は目が点になって体が固まった。

「ギャア!?」

真夜中に巧の悲鳴が響き渡る。

「はあ・・・はあ・・・!?」

どこか怯えている巧は望の腕を振り払いベッドから飛び降りる。

「ん・・・んん・・・うるさいな。」

望は巧にキスをしようが、巧が大声を出そうが寝ぼけて起きた。

「zzz。」

また眠りに着いた。望むがいびきをしていないのがせめてもの救いだった。

(ファ、ファーストキスが!? 僕のファーストキスが男に奪われた!?)

巧のプライベート空間は愛と美の女神アプロディーテーの化身ヴィーナスが男の姿に化けた愛神望の出現の前に崩れ去った。



そして朝を迎える。

「コケコッコー!」

どこかで鶏が鳴いた。

「ん・・・んん・・・ふわあ! 良く寝た!」

望は手を伸ばして目を覚ました。

「ん? 何をしてるんだ?」

ベットで寝ていると思った巧が床で目の下にクマを作って座って起きている。

「羊が1兆3873億・・・。」

ファーストキスを望に奪われた巧はショックで眠れなかった。

「変わった奴だな。」

真夜中の出来事の記憶がない望には巧が理解できなかった。



望と巧は高校1年生なので学校に行かなければいけない。

「あれ? 巧くんは学校に行かないの?」

望は学校に行く準備ができたが、巧は部屋に転がってスマホでゲームばかりしていた。

「引きこもりが学校行ってどうするの!?」

巧は引きこもりのオタクであった。

「あ、そっか。ごめんごめん。」

望は聞き分けが良かった。

「納得するな!?」

巧は世間の普通として学校に行きたい気持ちもある。しかし巧みにとって学校は楽しい所ではない。

「イヒ!」

望は笑って誤魔化す。

「おい、僕は学校には行かないから、1人で行ってね。」

あくまでも巧は学校には行かないと言う。

「学校に行きたくなあれ~。」

望は愛と美の女神の化身の力で巧の記憶を塗り替えて、学校が大好きな記憶に塗り替えようとした。

「僕は絶対に学校に行かない!」

しかし巧の記憶を変えることはできなかった。

「あれ? おかしいな。巧には女神のパワーが効かないのか?」

望は巧に自分のスキルが通じないのを理解した。

「それならそれで私には巧を学校に行かせる方法がある。」

望は男の化粧道具の入った化粧箱を取り出した。

「化粧!? おまえはオカマか!?」

巧は望が化粧道具を出したことに驚いた。

「愛と美の女神アプロディーテー様の偉大さを思い知るがいい! メイクアップ!」

望は巧のパジャマに口紅で化粧を始めた。

「うわあ!? 勝手に服が脱げていく!?」

巧のパジャマは自分の意志をもったかのように、勝手にボタンを外し巧の体から脱がされていく。

「それそれ! 次は制服だ!」

望は楽しそうに巧の学校の制服にファンデーションをブラシで化粧していく。

「うわあ!? 制服に襲われる!?」

今度は巧の学校の制服が自分の意志をもったかのように、勝手に巧の体に制服を着せていく。

「さあ! 制服に着替えたし、巧くん、一緒に学校に行こうか。」

望は微笑みを浮かべて、巧に優しく手を伸ばす。

「嫌だ! 絶対に何があっても学校に行かない!」

制服に着替えても巧は学校へ行くことを拒否した。

「服が勝手に動いたんだ!? 僕はきっと病気なんだ!? 学校を休まねば!」

「そっちか・・・。」

望は学校を嫌っている巧に呆れる。

「約束する。私が巧を守る。」

望は差し出した手を引っ込めなかった。

「・・・どんなことがあっても?」

巧は望を疑うように見つめる。

「どんなことがあってもだ。」

望は視線を巧から逸らさないで見つめる。

「・・・わかった。今日だけはおまえを信じてやるよ。」

巧は渋々だが望の差し出した手を掴んだ。

「よし! 学校へ行こう! イヒ!」

望と巧は一緒に学校に行くことになった。



巧と望は一緒に仲良く学校に歩いて登校している。

「巧くんの学校って、どんな学校?」

望は転校生なので学校のことに興味があった。

「楽しくない。最悪。死んだ方がマシ。」

巧は学校が嫌いだった。

「ハハハ・・・。」

望は巧が学校が大っ嫌いなのがよく分かった。

「ああ~、嫌だな~学校。もう家に帰らない?」

巧は学校に行きたくなかった。

「帰らない。私が学校を面白くしてあげよう。」

望は巧に優しく微笑みかける。

「・・・仕方がない。行ってやる、学校に。」

巧は望の美しい笑顔に騙されているような気になるが、なぜか学校に行く気になってしまった。

「イッヒッヒ。」

思い通りに話を進めて上機嫌の望の笑い声は巧には聞こえない。



巧と望は学校に無事にたどり着いた。

「おい、まず職員室に行こう。」

「ほ~い。」

巧は望を職員室に案内する。

「失礼します。転校生を連れてきました。」

巧は職員室のドアをノックしてドアを開け中に入る。

「うおおお~!? なんだ!? この職員室は!?」

望は職員室の中を見て大声をあげた。

(女神様ばっかり!?)

巧の高校の職員室の先生は女神率が高かった。

(あれは守護女神アテーナー様!? こっちは太陽女神天照大神様!? それに大母女神キュベレー様!? 海と毒の女神ティアマト様!? 大地女神ガイア様!?うわわわわ!?)

望は憧れの女神様が目の前にたくさんいて、口から泡を出して倒れそうなぐらい目が回っていた。

「どうしたの? 緊張してるの?」

巧が望を心配して声をかける。

「が、が、学校・・・怖い。」

望は学校の恐ろしさに気づいた。

「やっと学校の恐ろしさが分かったか!?」

巧も学校が好きではない。

「早退します!」

そして望は学校から逃げることを選択する。

「さあ! うちに帰ろう!」

巧も望に便乗して家に帰ることを選ぶ。

「おお!」

ここで初めて巧と望の息があった。

「こら。おまえたち。どこへ行く?」

職員室を出ようとする2人を呼び止める女性の声がする。

「ビクン!?」

呼び止める声に巧はビビって体の動きが止まった。

(こ、この声は!? まさか!?)

望は巧以上に聞き覚えのある声に恐怖を感じて動けなくなった

「久しぶりだな。」

巧と望が恐る恐る振り返ると綺麗な金髪色白の美女がいた。

「・・・愛美露出手先生。」

巧の担任の愛美露出手先生だった。

(アプロディーテー様!?)

望の主、愛と美の女神アプロディーテーが人間の姿でいた。

「時神、おまえが学校に来るとは珍しい。どういう気の変わりようだ?」

愛美露出手は巧に尋ねる。

「きょ、今日は体調が良かったので、アハハハハッ。」

巧は笑って誤魔化す。

「やっと見つけましたよ! アプロディーテー様!」

望が巧と愛美露出手の話に割って入る。

「仕事が山のように溜まっているんですから! 現実世界で遊んでいないで、異世界に戻って働いてください!」

望はアプロディーテーにきつく叱る。

「元気なおまけだ。」

愛美露出手は、また化身が主である自分に説教をして、ウザいと感じている。

「聞いているんですか!? アプロディーテー様!?」

さらに望は愛と美の女神に厳しく畳みかける。

「ギャア!? なにを!?」

愛美露出手は望のほっぺたを両手で掴んで、ほっぺたを広げた。

「私は愛と美の女神アプロディーテーではない。保健と美術の教師。愛美露出手だ。分かったか? 愛神望くんよ。ええ! どうだ!」

愛美露出手は望の顔が腫れるぐらいほっぺたを縦横に引っ張りながら、自分の化身に理解を求める。

「ひゃ、ひゃい。お許しくだひゃい。アプロディーテーひゃま。」

望は白旗をあげた。

「プチ! 私は愛美露出手先生だ!」

まだ理解していない望のほっぺたを愛美露出手はさらに引っ張った。

「ひゃい! ひゃい! ひゃんひゃい! お許しくだひゃい!」

望のほっぺたはさらに伸び広がった。

「分かればよろしい。まったく困った転校生だ。」

愛美露出手は望のほっぺたから手を離した。

「ひゃたい・・・。」

望のほっぺたは赤く腫れあがっていた。

「おい!? 大丈夫か!?」

思わず巧は望の心配をする。

「心配してくれるの? 巧くん、優しい。」

望は巧を女神のように崇めた。

「ち、違う!? たまたまだ!」

変なことを言われて照れる巧。

「ハッハッハ! いつも明るい学校ですね。」

そこに白衣を着た女医がお供の助手とペットの小さなパンダを連れてやって来る。

「おはようございます。美代先生。今日は歯科検診の日でしたか。」

愛美露出手は女医一行の相手をする。

「はい。おはようございます。愛美露出手先生。そうなんです。今の時代、開業医は地元に貢献しないと廃業してしまいますからね。では、後程。ハッハッハ!」

「失礼します。」

「キュル。」

笑いながら美代先生たちは去って行く。こんな先生ですいませんと助手とパンダが頭を下げていく。

「今のうちだ。」

「うん。」

そっと、巧と望は職員室から逃げ出そうとする。

「待て。」

巧と望の逃亡は未然に愛美露出手に防がれた。

「ビクン!?」

バレた!? っと巧と望は恐怖で動けなくなり、変な汗が湧き出してくる。

「時神は行っていい。転校生は残れ。私、直々に指導してあげよう。」

愛美露出手は自身の化身を再教育するつもりのようだった。

「助けて! 巧くん!」

望は巧に救いを求める。

「失礼します!」

巧は望を見捨てて去って行く。

「待って!? 巧くん!? 巧く~ん!?」

望が懸命に手を伸ばしても、巧は後ろを振り返らずに行ってしまった。

「ギャ!?」

望は視界に愛美露出手の影が迫ってくるのが見えた。

「聞かせてもらおうか? どうしておまえがここにいるのか?」

愛美露出手はかなり怒っていた。

「ヒイイイ!?」

望は恐怖した。



キーンコーンカーンコーンと始業のベルが鳴る。

「それではみなさんに転校生を紹介します。」

愛美露出手先生が教室にいる生徒に新しい仲間を招き入れる。

「愛神望です。よろしくお願いします。」

望は教室の黒板の前に立ち一礼して挨拶する。

「愛神の席は、時神の隣にしよう。愛神は時神の家に居候しているそうだからな。」

愛美露出手先生は面白半分でプチ情報をぶち込む。

「ホモだ! 一緒に暮らしているなんてホモに違いない!」

誰かが巧と望のことを冷やかした。

「どうも、ホモです。」

望は笑って誤魔化した。

「キャハハハハ!」

生徒たちは笑って喜んだ。

「巧くん、私たちラブラブだね。」

席に座ろうとする望は隣の席の巧みに軽く声をかけた。

「どこがラブラブだ!? まったく誰がホモだ、誰が。」

巧はこういうクラスで盛り上がるというより、誰かをバカにするという幼い雰囲気が嫌いだった。

「今日は歯科検診があるから呼びに来たら、静かに一列で行くように。」

愛美露出手先生は学校行事を伝達する。

「は~い。」

生徒たちは返事をする。

「それでは美術の授業を始めます。」

愛美露出手先生は美術の授業を始めた。

「やった。巧くんの横で授業が受けれる。イヒ。」

望は巧の側にいられるのが嬉しかった。

「おい、はしゃぐな。本当にホモに思われるだろう。」

巧は望を本気で嫌がった。

「巧くんとならいいよ。」

望は巧に抱きつきたい気分だった。

「そこ、うるさい。」

その時、愛美露出手先生がうるさいので巧と望を注意した。

「ほれ、見ろ。」

巧は目立たないように目を伏せる。

「すいません!? アプロディーテー様!? はあ!? しまった!?」

望は愛美露出手の本当の名前を読んでしまう。

「ほお~、まだ私が愛美露出手先生だということを理解してないようだな。」

愛美露出手は挑戦的な望の態度にキレた。

「愛神! 前へ出て服を脱げ! デッサンのモデルにしてやろう!」

愛美露出手は美術教師の権限を行使した。

「えええ!? お許し下さい!? アプロディーテー様!?」

望は錯乱して、またアプロディーテーと言ってしまった。

「今は男なんだからいいだろう?」

愛美露出手の魔の手が望を襲う。

「助けて!? 巧くん!?」

望は巧に助けを求める。

「知らない。」

巧は冷たかった。

「そ、そんな!? 巧くんの薄情者!?」

こうして、望は服を脱がされ美術の授業のヌードモデルになり、クラスの皆に絵を書いてもらいクラスに溶け込むのだった。

「これでこそ私の化身だ。イヒ!」

愛美露出手こと愛と美の女神アプロディーテーはご満悦だった。


つづく。

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