talk in one's sleep

目井めいさん、あのね、相談したいことがあって……」

 一人で目井クリニックにやって来たその小学生は、そう声を震わせた。


「………………」


「目井さん……?」


「はっ! ああ、申し訳ありません、ちゃんと聞いてますよ。どうされたのですか?」


「うん、あのね。昨日の夜のことなんだけど。妹に大きい声で名前呼ばれたから、『はーい』って返事して妹の部屋に行ってみたの。そうしたら、妹は寝てて…… 寝言だったんだよね……」


「ほうほう」


「あのさ、言うじゃない? 『寝言と会話された人は死んじゃう』って……」

 じわり、と目を潤ませる小学生。


「なるほど、それを気にされているのですね。

 結論から言うと、死んでしまうようなことはないので安心してください。

 寝言に返事が返ってくると、脳が刺激されるんです。すると、脳は今自分は起きている状態だと勘違いしてしまい、寝言が増えるんです。そうすると十分に眠ることができなくなってしまうんですね。恐らくそういうようなところから来た、ただの作り話なんじゃないかと思います。

 というわけで、たしかに寝言に答えてしまうのはあまり良くないことなんですが、妹さんはその後特にお変わりなどはなかったでしょうか?」


「うん、朝になったら起きて、普通にしてたけど……」


「でしたら、気にしなくても平気だと思います。もともとお子さんは大人に比べると寝言が多い傾向もありますしね。

 ただもちろん、急に寝言が増えたですとか、何か不安なことがあったらまたいらしてくださいね。

 ともかく、あなたのせいで妹さんが亡くなるなんてことはないので、そこは心配しなくて大丈夫ですよ」


「そっか…… 良かった。ありがとう」

 小学生は胸を撫で下ろした。




 小学生と入れ違いに、車椅子の患者様が診察室に入ってきた。

「やー目井さん、3ヶ月ぶりー! じゃ今回も、定期健診お願いしますねー」


「………………」


「目井さん?」


「………………ZZZZZ」


「!? ちょっと、目井さん!?」


「はっ! えっ!? あ、ああ。いやー申し訳ありません。いつの間にか眠ってしまっていたようです。あー、なんかよく寝た気がします……」


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