あけおめ

「あーつなしさん! 明けましておめでとうございます!」


 水筒を受け取りに目井めいクリニックの自動ドアを通った途端、足元からそんな声がした。


「目井さん! 明けましておめでとうございます!」


「ええ、ちょっと待っててくださいね。お家でお餅を喉に詰まらせてしまった方を助けるのに手こずってしまって今戻ってきたばかりなんです」


 目井さんはごそごそと診察室へと入っていった。




「はい、こちら今週の分です」


 そう言って目井さんの差し出す水筒の入ったバッグを、十は屈んで受け取った。


「ありがとうございます。こちら空になった水筒です」


「ありがとうございます。では、今年も宜しくお願いしますね」


「こちらこそ宜しくお願い致します!」


 十は、こたつに潜り込んで亀のように顔と手だけを覗かせている医者に元気に応えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る