受験シーズン
夕方。
「目井さーん! 落ちっ」
「しっ」
目井さんは自分の口に人差し指を当てて高校生の台詞をさえぎった。
怪訝そうな高校生に、壁のポスターを指し示す。
そこには「受験シーズンなので、『落ちる』という言葉を使うのは避けましょう」とあった。
そう言えば、学校でも大学受験を控えた3年生の先輩達に気を使って「落ちる」という言葉をできる限り使わないようにしようという話になっていることを思い出した。
「そうですね。ごめんなさい」
高校生は踵を返して学校へと戻った。
「というわけでごめんなさい。目井さん呼んで来れませんでした」
「…いや… ごめんじゃなくて… その言葉使わないでこの状況を表現すりゃいいだけだろワレ…」
「あっ、なるほど。じゃあもう1回呼んで来まーす」
「頼んだぞワレ…」
受験勉強の息抜きにと学校の5階の教室でバク転をしていたら窓を突き破って校庭の花壇に落ちた3年生は、後頭部から湧き出しつつある赤い水たまりの中、息も絶え絶えになりながら後輩の背中を見送った。
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