第5話 狩りは順調

ジュール達は両親と一家で冒険者をしながらあちこち渡り歩いてたんだけど、2年前に両親が依頼中の事故で亡くなったんだ。それ以来2人で働くしかなかったから、少し早かったけど特別に冒険者ギルドに入会させてもらって、頑張ってるんだよ。今はジュールが剣を使って、ランカーが魔法を色々覚えてるところ。


「ランカー!気をつけろっ、チャマダラだ!」

ジュールが叫ぶ。チャマダラは小さいけれど、すごいスピードで飛ぶので、後ろに抜けられたみたい。小さな蛾で、6センチくらいしかないし、噛み付いたりもしないんだけど、毒の鱗粉を撒き散らすので、ちょっと危険。慌ててランカーがファイヤーで鱗粉を燃やしたら、ボフンッと爆発した!

「わあっ」

ランカーが尻餅をついちゃったけど、幸い前髪が燃えたくらいで済んだよ。

ふうっ。


ジュールの声を聞いて焦って助けに来たけど、チャマダラはすでに遠くに逃げちゃっています。

僕は咥えてるモルフォをジュールの前にぺッて放した。


多少のトラブルはあっても、狩は順調だ。

僕が捕まえたモス種は、ランカーが触覚と採取できる部分を取ってから、一か所に集める。そこはあらかじめ深く抉れていて、周りに木も生えていないので、狩をする時は、残った部位はそこで焼却するように決められてるんだって。

放っておくと、ジャイアント・アントの餌になって、どんどん増えるんだ。ジャイアント・アント、つまり、アリだよー。

僕、アリ、嫌い!

僕が獲物と戯れてると、体に登って来たりするんだよ。小さいから捕まえられないし、噛まれても痛くないけど、ウザい。

とにかく、ジャイアント・アントに餌を与えるようなことはしないのです!


アリはこっちの世界では、かなり厄介な魔物だ。向こうなら、庭ならいいけど家に上がって来たら嫌よねえ?!って感じだったけど、こっちじゃあ、小さい人から見たら大人の手のひら位で、行列に当たると、それはもう災害!

でもコッチには天敵がいる。ココルっていう、雀より少し小さな鳥だよ。小さい人からしたら、膝の高さくらい?分かりにくいよね、もう。

「ココルッ、ココルッ」て鳴く、黄色い可愛いヤツで、うまい。

最初、こっちに来た時によく捕まえて食べてたけど、ジュールたちに、どうか食べないでほしいとお願いされたから、代わりに時々美味しい肉を貰うんだ。


そんなわけで、えっと、何だっけ?

あ、そうそう。狩りは順調。

いろんなモス種を、3人で手当たり次第狩って、100匹分は超えたので、休憩だ!

僕が捕まえたのも多いけど、ジュールも結構頑張ってた。木に止まっているのを槍で刺すんだよ。


モス種は全部の種類じゃないけど、わりと多くの種類が同じ木を縄張りにしていて、大きく羽を広げて止まるんだ。大発生すると、木が丸ごとモスに覆われるくらいになって、止まれる限界を超えると大移動し始めるんじゃないかな。なので、森に狩りに来た人達が、木に止まったモスをよく見るようになると、駆除の依頼が入るんだよ。

昼間は大抵木に止まっているから、捕まえるのは簡単です!


危険が少なくて重労働だから、初心者向けの依頼だね。今日も何組か森で同じ依頼をこなしてるよ。

取り過ぎてもダメらしいので、休憩したらそろそろ帰ります。

「あーもう、身体中粉だらけだよ。風呂に入りたいな」

ジュールが叫ぶ。

鱗粉って、くっついたらピタってして取れないよね?

わかるー。

ま、僕はブルブルってしたら大体大丈夫なんで、お風呂はノーサンキューなのさ。

じゃあ、2人とも気をつけて。

また遊ぼうねー!


あ、そうだ!お家の人に、モス1匹、持って帰ってあげよー!

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