第15話 夢を見る方法
久しぶりにポメラを開いた。電源はつかない。最後に開いたのはいつのことだったろうか。ポメラは、有り体にいってしまえば、旧式のワープロを手のひらサイズに納めた、どこでも気に入りのキーボードがないとイヤでたまらないテキストフリークのための、愛らしい機械のことだ。ポメラは単四電池二本で動く。背面のロックをはずして、古い単四電池をはずし、新しい電池を二本滑り込ませる。儀式のように慣れた僕の手つき。
そうして、真新しい動力を得たポメラは、その小さな液晶の中に薄墨のような文字を映し出した。自動的に、最後に編集していたファイルが立ち上がる。
その、書きかけのテキストは……やっぱり、君のことについて書いたものだった。
中野さん。去年、北海道からの帰り道、羽田空港で別れてから会っていない。
君は、今、どうしているの。相変わらず、真っ赤なエレキギターを弾いているの。その綺麗な声で、誰かの後ろでそっと歌っているの。
ねえ。どうしている、中野さん。
もう一度、僕の隣に立って、同じ空を見上げる日はくるの。
あの日々が夢だったというのなら、どんな風に眠ればいいんだろう。眠り方すら、忘れてしまった気がする。
中野さん、君は眠っている? 起きている? 夢は見ている?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます